旧三井銀行出身の車谷氏は、企画畑が長く、福島第一原子力発電所の事故で危機にひんした東京電力の再建策や、大型買収に関わるなど、三井住友銀の関係者の間では「切れ者」で通っており、副頭取時代には次期頭取の呼び声が高かった「大物」だ。結果的に頭取就任は果たせなかったが、副頭取を17年4月に退任した後に転じたCVCは、銀行の仲介ではなく自らの人脈でポストを得たとされる。

 今回の東芝トップの指名も、主力取引銀行の三井住友銀の圧力や関与はなく、東芝自身が車谷氏の実力にすがって要請した。東芝の決断は、土光氏をトップにした当時の危機感と共通する。

社外トップに警戒も

 一方で、綱川智社長(62歳)は4月1日以降も、社長兼COO(最高執行責任者)として続投することが決まった。

 池田委員長は「車谷氏は中長期の事業戦略の策定と対外活動、綱川社長は業務執行の統括」とだけ説明しており、役割分担は不明な部分も多い。

 2月14日の記者会見で綱川社長は「今回の人事の意味は経営執行の強化と考えていただければ」と述べて「トップ交代」との表現を避けた。東芝社内でも「外部人材ではできることも限られる」(中堅幹部)との声もあり、53年ぶりの外部トップには警戒感もにじむ。

 土光氏が東芝トップに就任した当時も社内では反発があったと伝えられている。だが、メガバンクで副頭取まで上り詰めた車谷氏が土光氏のように東芝の経営の主導権を握る日はそう遠くないだろう。東芝がそのスピードと辣腕に付いていけるかが課題となりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)