封筒の会社と聞いて、何の関心も湧いてこないと思われるかもしれない。しかし、ほとんどのメーカーが封筒のような「コモディティ」を製造・販売している。また、いくら消費財メーカーとはいえ、営業先はほとんどが法人である。このような意味から、このマッケイ・エンベロップの営業スタイルは参考に値する。優れたホテルマンのごとく、ホスピタリティの高い営業担当者は多い。しかし、これを組織として実現できているところは少ない。
本稿は1988年に発表されたものだが、ここで紹介されている原則に、その精神を損なうことなくITをかけ合わせられれば、同社のように、成熟市場においても2桁成長を実現できよう。
営業担当者シップが成熟かつ低成長産業でも二桁成長をもたらす
いまマーケティング課長と営業担当者を交えながら、会議室では重要顧客の取引について見直している最中である。各顧客企業を分析するに当たって、アカウント・エグゼクティブ(顧客担当者)はファイルを開き、大声で読み上げる。
Harvey B. Mackay
ミネソタ州ミネアポリスにあるマッケイ・エンベロップのCEO兼会長、そしてオーナーでもある。
「熱烈な共和党支持者」
「中西部特有の保守的な価値観」
「ボーイスカウトの熱心な後援者」
「大の切手収集家」
「購買の意思決定を先送りにしており、強力にフォローする必要があり」
当然のことながら、このファイルには顧客企業の市場ポジション、新しい商品群、工場建設計画に関するデータも含まれている。
この会議のかなりの部分が、顧客企業の意思決定者に関する人間的な性格や特性に焦点を当てており、いかに上手に営業担当者がこれらを理解し、創造的に営業するかに的を絞っている。変わった時間の使い方だと思われるだろうか。
多くのマーケティング関係者にとって、このような議論は正統なアプローチからやや外れているように思われるのではないか。しかし、このような情報こそ重要かつ示唆に富んだものであり、これらを無視する営業担当者は明らかに不利な立場に立たされている。
市場セグメンテーションをマーケティング戦略に活用するのはもはや当たり前であり、多くの企業がそのテクニックに精通している。おかげで、ターゲット顧客に短時間で即席の関係を結ぶことができるようになった。
しかしその一方、営業戦略に「人間性」という要素を勘案する必要性が希薄化しつつある。オンラインの受発注、数多くの原価分析や財務分析といったものが、営業担当者と顧客とのリレーションシップよりも重視されている。