政府が平成30年国会の最重点項目とした「働き方改革法案」のひとつの柱となる裁量労働制の改革が取り下げられた。これを受けて、この延長線上といわれる「高度プロフェッショナル制度」についても、その撤回を求める声が高まっている。
しかし、主として労働時間の長さで評価されるような業務が、次第に省力化機器や人工知能(AI)に置き換えられる一方で、それらを活用した高度専門的な業務が、今後、拡大する。それにもかかわらず、労働者の生産性や労働の質の差よりも、単に労働時間の長さに応じた賃金制度にこだわって、欧米では普遍的な専門職の働き方への改革に反対する、いわば「残業代至上主義」は果たして正しいのだろうか。
労働時間改革の問題を
理解するための三つのテーマ
この労働時間改革の問題を理解するためには、(1)労働者の健康確保のための労働時間の抑制、(2)賃金の支払い手段の一つとしての残業割増賃金の是非、(3)法律の実効性を担保する労働基準行政の改革、等の三点を明確に区別して考える必要がある。