電通社員の過労死自殺事件をきっかけに、働き方を健全にする機運が高まってきた。もちろん、まだブラック労働は各所にあるはずだが、それでも10年前を思い出すと、今では信じられない醜い労働環境が蔓延していた。そこで、10年前にあったブラック労働エピソードを調査してみた。働き方への注目度が高まる中、あえて10年前の黒歴史を思い出して、未来への戒めとしたい(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)
「就職氷河期」の直後だからこそ
あまりにブラックだった10年前
プレミアムフライデーや残業時間の上限規制など、「働き方」に関する政府の動きが慌ただしい。電通社員の過労死自殺が大きな問題になり、社会の働き方に対する機運が高まった結果、このようなニュースが盛んに報じられているといえよう。
現実的に見れば、今もブラックな労働環境にさらされているビジネスパーソンはたくさんいる。残業時間の上限規制についても、「繁忙期は月100時間未満」という落としどころに対し、批判の声も多く挙がった。もっと大幅に改革をしようにも、まだまだ企業の抵抗が強いのだろう。
そんな実情を考えながら、ふと10年ほど前の労働環境を思い出すと、今よりずっとひどい状況だった記憶がある。というのも、10年前の2007年といえば、ちょうど就職氷河期が終わって2年ほどの頃。社員の大半が氷河期に採用された人たちだった。今よりずっと「買い手市場」の中で採用されたため、会社の「理不尽」を押し付けられることが多かったはずだ。
それは企業に限った話ではない。例えば、2006年12月に自殺した当時25歳の新任女性教員。彼女の死が公務災害に当たるかどうかについて、今年2月に東京高裁で裁判が行われた。彼女は長時間労働や頻発する児童のトラブルに悩み、うつ病を発症。さらに、初任者研修では「病休・欠勤は給料泥棒」と言われたという報道もある。しかも、この研修は"校外"で行われたもの。つまり、その学校だけの問題でなく、現場全体にブラックな空気が蔓延していた可能性がある。