ダイナベースが立地する平和島地区は都心にも近く、また、臨海部にも接しているため、道路などが通行止めになった場合でも、船などの代替輸送手段にシフトすることができる。国が定める緊急物資集積拠点にも容易にアクセスすることが可能になるという意味において、同社がダイナベースに拠点を構える社会的意義は大きい。災害時には“都民の薬箱”としての役割を果たすことにもなるからだ。
新センターで「自動化率90%」
東邦HDでは、2018年7月に予定されるダイナベースの竣工後、約1年をかけてマテハン機器などを導入し、19年夏を目途に新センターを稼働させる計画。現在、都内2カ所にある物流センターを集約・移管し、医療用医薬品、一般用医薬品(OTC)、検査薬、医療材料などを総合的に取り扱う基幹センターとして運用していくことを構想している。
その中で、同社が特に注力しているのが自動化率の向上だ。これまでも物流センターを新設する際には、その時点での最先端の技術やマテハン機器を導入して自動化率の向上に取り組んできた。現時点での最新拠点は2014年1月に稼働したTBC埼玉(埼玉県久喜市)だが、同センターでの自動化率は65%に達している。
拡大画像表示
「ここ1~2年でのAIやロボット技術の進化は目覚ましい。新センターでは、これまで蓄積してきたノウハウや知見を活かすとともに、最新技術を導入することで自動化率を90%まで高めたい。投資は嵩むが、完成すれば今後15~20年は活用することになる。5年後にやっておけばよかったと後悔するようではダメ。当社の経営理念を具現化したモデルセンターにしていきたい」と意気込む。
同社が物流センターの自動化に積極的に取り組んできた背景には当初、「セブンナイン」に象徴される出荷精度の向上という目的があった。「正確性を追及していくのは、可能な限り人手を介在させないシステムを構築することで、ヒューマンエラーが起きない環境をつくる必要があったから」。
だが、労働力不足が顕在化し、物流センターで働く作業員の確保がままならない時代を迎えるようになり、同社の取り組みは当初の狙いとはまた別の効果をも生み出している。
「数万アイテムに及ぶ流通業のセンターでピッキング作業の自動化に取り組んだのも当社が最初だった。自動化への大胆な投資も、数年経てば人件費の削減などで回収できる。ダイナベースに開設する新センターでは、セブンナインのその先を追及していくとともに、医薬品サプライチェーンのあり方を変えていく試みにも積極的に挑戦していきたい」との青写真を描く。
災害対応などのBCPに加え、極限まで自動化・省力化を追及した最新鋭の物流センターが京浜トラックターミナルに完成する。