インテルから移籍しアドビのCMOとなり12年、業界を代表するマーケターであり、世界で最も影響力のあるCMOトップ14位にランクされているアン・ルネス氏に、企業のデジタル変革にマーケティングが果たす役割を聞いた。
日本企業のデジタル変革への
取り組みは遅れていない
――これまで何度も来日して日本企業の幹部と会合を持っているそうですが、日本企業のデジタル化への踏み込み具合に対して、どんな印象をお持ちですか。
アドビ システムズ
エグゼクティブ・バイスプレジデント兼
最高マーケティング責任者(CMO)
大学卒業後、インテルに入社しマーケティングの仕事に就く。有名な「Intel Inside」にチームとして関わった後、数々のキャンペーンを主導し成功させる。2006年にアドビに入社。アメリカ広告協会の殿堂入りしており、国際広告協議会の執行役員も務める。2016年フォーブス誌による「世界で最も影響力のあるCMOトップ50」に選出(14位)。玩具のマテル社の取締役も務める
アン・ルネスCMO(以下・略) 「創生の会」いう名がついたアドビの日本の顧客企業幹部が集まる会合に、毎年出席しています。企業同士の情報交換も盛んになっています。デジタルによるビジネス変革に対応するには一企業では難しいため、企業の幹部は様々な形で情報を求めています。
もともと私は、日本企業のデジタル変革の歩みが遅いとは思っていません。世界中の企業が、デジタルの波に直面し、対応策を模索している状況です。今回多くの日本企業のリーダーにお会いして感じたのは、デジタル変革に対する危機感が非常に高まっているということです。私たちに対して具体的にアドバイスを求めると同時に、参加企業同士でも情報共有し、解決策を探ろうとしている光景が見られました。
アドビ自身、パッケージソフトの会社から、クラウドサービスプロバイダへと変革を遂げています。従来アドビが提供するソフトウェアはクリエイター向けのものでしたが、デジタルマーケティング製品が加わったことで、顧客自体が大きく変わり、ビジネスはすべてが変わったと言ってもいいでしょう。顧客企業からは、この変革の道筋を参考にしたいという声も多くいただきます。
一方で、アドビの顧客企業のなかでも、それぞれのデジタル変革を成功させているところが多くあります。そうした企業がどのように変革を進めたのか「プレイブック」(手順書)を教えてほしいという話もいただきます。