
「今日は接待ではなく、個人間の食事会です」――中国のレストランで、相手がこう小声で念を押す。五つ星ホテルが玄関先でテント張りの屋台を始める。月200箱売れていた茅台酒が今では20箱も売れない――2025年5月に施行された史上最も厳しい「禁酒令」が、中国全土を席巻。飲食業界を襲う未曽有の危機が、中国の伝統文化そのものを変えようとしている。(日中福祉プランニング代表 王 青)
「禁酒旋風」で、中国飲食業界に衝撃的な打撃
先日、仕事で中国に行き、北京や上海などを訪れた。約半月の滞在で、公私ともに会食することが多かったのだが、訪れたほとんどのレストランで異変を感じた。
立地が良くて、これまで大変人気だった店が、ガラガラに空いているのだ。週末の夜など通常なら混雑しているはずの時間帯でさえ、店員の数がお客より多く、広い店内がより広く感じられた。


さらに、筆者が仕事先に招待された会食の場合では、相手が小さな声で「今日は接待ではなく、個人間の食事会です」と前もって強調するのだ。
今回の滞在中、さまざまなレストランで、日本ではあり得ない場面をいろいろ経験し、今、中国の飲食業界が厳しい状況に置かれていることを身をもって感じた。
一体、何があったのか。