「なかなか英語が上達しない」「何度か英語にチャレンジしたけどうまくいかなかった」……そんな人は多くいることと思います。実は英語が上達しない人には多くの共通点があり、そこをクリアすれば誰でも英語は身につけられます。
 この連載では、3月1日に発売され、早くも増刷が決定した『世界で活躍する日本人エリートのシンプル英語勉強法』(戸塚隆将)から、内容の一部を特別公開します。

「話せないのは語彙力がないから」という誤解

「私の課題は語彙力ですね」
「先日テストを受けたら単語がわからず、やはり語彙力が課題です」

 英語に伸び悩む人からよく聞くセリフです。こうした「語彙力不足」を課題と認識している人は、なかなか成果が出にくい傾向にあります。

「私の課題は○○力です」と言う人は英語が上達しない戸塚隆将(とつか・たかまさ)
1974年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス勤務後、ハーバード経営大学院(HBS)でMBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2007年、シーネクスト・パートナーズを設立、代表取締役に就任。同社にて企業のグローバル事業開発およびグローバル人材開発を支援するほか、HBSのケーススタディ教材を活用した短期集中型実践ビジネス英語プログラム「ベリタスイングリッシュ」を主宰。グローバル人材を輩出し続けている。著書に『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(2013年、朝日新聞出版)があり、本書は20万部のベストセラーになった。

 それはなぜでしょうか。語彙を積み上げなければいけないというのは、言語を学ぶ以上当然のことです。語彙力強化は自転車と同じ。ペダルを常にこぎ続ける必要があります。終わりはないのです。

 知らない語にはかならず遭遇します。大切なのは、新しい語に出合うことを最初から想定し、それにポジティブに向き合う姿勢です。初学者でも上級者でも、語彙力強化は常に必要であり、見知らぬ単語に出くわすことは、どんなレベルになっても永遠に続くものだと、認識しておきましょう。

 英文を読んでいてわからない単語にぶつかったら、まず英文の構造をしっかり捉え、前後から類推してみます。そして、もしキーとなる単語の意味が理解できないのであれば、辞書で調べます。「語彙力が課題です」と口にする人の多くは、英文を読んだり、聴いたりするときに、辞書を調べる手間を省く傾向にあります。面倒でもきちんと辞書をひき、すべての訳に目を通し、自分なりのイメージを把握することが大切なのです。

 

「英単語帳で片っ端から覚えればいい」という誤解

 多くの英文に触れ、単語のイメージを蓄積させたら、次に行なうのは単語を整理することです。たとえば「immediate」という単語に何度も遭遇し、そのたびに辞書を調べたとします。

I have to leave here immediately.
(私は、直ちにこの場を去らなければいけない。)

He is my immediate neighbor.
(彼は、私のすぐ近隣の住民です。)

My immediate boss is on a business trip this week.
(私の直属の上司は、今週は出張に出かけています。)

 毎回辞書で調べるうちに、徐々にimmediateという単語に目が慣れてきます。次に、「明確に何を意味しているのか、ちょうどいい訳語がすぐに出てこない」「なんとなくわかるようでわからない」という状態になります。おぼろげなイメージがありつつも言語化できない、という状態です。

 この段階に達した単語が増えてきたところで、英単語帳を使って意味を「整理」していくのです。市販の英単語帳を前からめくっていき、見たことのある単語にリズミカルにチェックをつけていきましょう。見たことのない単語は、当面無視をしていても構いません。次に、チェックをつけた単語についてのみ短時間で機械的に暗記していきます。

 いま「暗記」と言いましたが、単なる丸暗記とは異なります。すでに馴染みのある語を覚えることは、ゼロからまったく見覚えのない語を頭に詰め込むのとは違い、それほどの労力はかかりません。
さらには、頭に入れた単語が次の週には抜けてしまうこともありません。それは、暗記のように見えて実は、うろ覚えの情報を自分の頭のなかで「再整理」しているに過ぎないからです。結果、効率的に、かつ、実践的な状態でボキャブラリーを増やしていくことが可能になるのです。

 この方法は、似たような綴りで混乱しがちな単語が増えてきたときも有効です。たとえば「contributeとattribute」「subscriptionとdescription」などです。

 実際の英文で見たことのない単語を英単語帳で「1対1」で丸暗記するのは非効率です。これをやると、そもそもひとつの単語を習得するために、膨大な暗記プロセスが必要になるばかりか、せっかく暗記した単語が英文に登場しても、覚えた訳語しかわからないため正確な意味を捉えられなくなるのです。