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スマートフォンの理想と現実

競争力向上と巨大市場を背景に勢いづく中国勢、
新興国BOPビジネスをも射程に収めるケータイ産業

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)レポート【前編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第19回】 2012年3月2日
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世界を狙う中国勢

性能競争にもしっかりキャッチアップ、力を付けてきた中国勢の代表格Huaweiのブース

 むしろ最も興味深かったのは、そうした性能競争に中国勢がしっかりキャッチアップしてきたということだ。特にHuawaiは今回、チップセットも同社からスピンオフしたベンダーから調達した、かなり独自色の強いAndroidハイエンド端末を発表した。しかも同端末は、省電力設計を目指している。数年前の彼らを知る者とすれば、正直驚くべき事態である。

 これは彼らが市場を主体的に牽引する力を持ち始めているという何よりの証左である。特に中国企業の場合、国内に巨大な市場を抱えていることから、もとよりスケールメリットを得られやすい。その上でAndroidという世界共通のプラットフォームを採用すれば、海外市場での価格優位性を強化することができる。

 特に新興国では、パソコンよりも先にスマートフォンの普及が期待される。こうした市場では自ずと価格優位性が決定的な競争要因となるだろうし、おそらく韓国勢でさえも高級品として位置づけられるだろう。本連載でCESの様子を報告した際にも言及したが、こうした流れはすでに大画面テレビ市場で生じており、それと同じ轍を踏む可能性があるということだ。

HuaweiのハイエンドAndroid端末はクアッドコアCPUを搭載、省電力性能も追求する

 また先進国も、欧州では今後しばらく経済成長の停滞とデフレに見舞われるだろうし、米国は全体の経済こそ好調なものの貧富の格差は激しく、多くの市民はケータイに余分なカネを払えない。そう考えると、中国勢の戦略は至ってオーソドックスなものだが、確実に駒を進め、ゲームを有利に進めている印象だ。

 さらに手強いのは、彼らはスマートフォン等の端末だけでなく、基地局やスイッチ等の通信機器でも、同じような戦略で新興国の市場支配を進めつつあるということ。東南アジアやアフリカはもちろん、安全保障や文化的差異の観点から、従来なら相容れない相手だったインド市場にさえも、触手を伸ばそうとする勢いである。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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