もともと、北朝鮮は自身の非核化に言及したことがない。北朝鮮が言うのは、あくまでも「朝鮮半島の非核化」であり、それはグアムなどからの米軍の戦術核を北朝鮮に向けないことも含まれている。また、南北首脳会談の討議のテーマとして挙げられている「平和体制の構築」は、これまでの休戦協定を平和協定に変え、在韓米軍の撤退や縮小を行い、北朝鮮の体制保障を求めるものだ。

 また、「段階的非核化」は、小刻みな譲歩で“核カード”を温存したまま、経済的な支援を先取りして行こうとするものである。こうした妥協は、1994年の米朝枠組み合意、05年の6ヵ国協議の合意で経済支援を受けながら、約束を反故にしてきた経験から、「またか」という感じである。

 要するに北朝鮮は、実質的には何も譲歩せずに時間を稼ぎ、その間に経済支援を受けようとしているとしか考えられないのである。

態度を急変させたのは
対北強硬派2人が政権入りしたから

 そもそも、中朝関係者によれば、中朝首脳会談に向けた調整が始まったのは昨年末のこと。それまでの北朝鮮は、中国側の再三の訪中提案に見向きもしなかったが、態度を急変させた。

 背景にあったのは、米国で穏健かつ対話重視派であったティラーソン国務長官が更迭されて、その後任としてポンペイオCIA長官が指名、またマクマスター外交安保補佐官に代えてボルトン元国連大使が就任したことだ。この2人は、いずれも北朝鮮に対して軍事行動も辞さない考えであるとされ、米朝首脳会談が決裂した場合、米国による北朝鮮攻撃の可能性が高まったと受け止めたのだ。