習近平が訪中した金正恩を破格に手厚く歓迎した理由Photo:KCNA/UPI/AFLO

人気ニュース番組で“破格の扱い”
習近平と金正恩の会談

 3月25~28日、北朝鮮の金正恩・労働党委員長が中国を非公式訪問した。同委員長は人民大会堂や釣魚台迎賓館などで習近平国家主席をはじめとする中国側の要人・関係者と会談した。また、中国科学院を参観し、中国が科学技術やイノベーションの分野で遂げた発展や成果に「敬服」の意を表した。

 北朝鮮の訪中団一行が中国を離れた後の3月28日の午前中、新華社が中国語で約3500字という長めの記事を4枚の写真と共に配信した。

 その夜、中国中央電視台(CCTV)の7時のニュース《新聞連播》は、30分番組の中の約14分を金正恩訪中、習近平との会談といった関連ニュースに費やした。筆者の理解によれば、中国共産党指導部として高度に重視する、政治的に“特殊”なイシューでなければこのような扱いはしない(とりわけ内政ではなく外交においては)。

 同番組は、日本のNHK紅白歌合戦に相当する「春節晩会」以外で最も視聴率が高いとされている。そこで番組の約半分の時間を割いて、中朝両国の友好の歴史や中朝関係の戦略的重要性などを国内的にプロパガンダしたのである(一方で、事前・事後における独自報道や公開議論は固く禁じられていた)。

 党指導部として全国の党員や人民に、それらを知り「肝に銘じて行動すべし」と“指令”を出しているということである。

 後述するように、そこには“習近平新時代”における政治体制やイデオロギーの特徴が如実ににじみ出ていた。