能力の低い医者は、仕事も途切れがちで収入も勤務医時代よりさほど増加しない(ので、勤務医に戻るケースが多い)。訳あり人材は、市場に淘汰される。要するに「有能は厚遇、低能は冷遇、無能は淘汰」されるのである。

 ドクターXの主人公のように「私、失敗しないので」とは言わないまでも、「私、失敗したら辞めるので」が、フリーランスの掟だ。後ろ盾となる組織も、明日の収入の保証もなく、失敗は自己責任であり、そのまま失職につながる。あれから11年、この世界で私は生き延びることができた。

学術団体の「日本麻酔科学会」
フリーランス化する学会員を公然と非難

「崩れゆく白い巨塔」「去りゆく中堅医」を、教授たちは黙って見ていたわけではない。

 日本麻酔科学会の理事長は2009年、学会ニュースレターで「モラルの喪失と感じさせる案件」として、大学医局を去ってフリーランス化する麻酔科医を公然と非難した。それでも、中堅医師のフリーランス化はなお続いた。

 そもそも、「日本麻酔科学会」とは学術団体であり、学問、研究、人材育成などを行う組織である。学会員がフリーランスに転じると「モラルの喪失」と責めるのは、全く筋違い発言である。

「大学医局で修業→独立開業」というのは、医者として一般的なキャリアパスだ。理事長の発言は、「上司や諸先輩に滅私奉公して教授の座をつかんだら、滅私奉公してくれるはずの後輩がどんどん辞める」ことにムカついて八つ当たり…としか私には見えない。

 大学病院の講師だった頃から、私はささやかなブログを書いていた。自分が専門とする分野の解説を中心に、1日の訪問者(PV)は100程度だった。たまに女医の恋愛ネタをアップすると、一気にPVは上昇した。大学病院を急に辞めたこともあって、近況報告を兼ねてブログを続けた。フリーランスになってから出会った人々や病院について記事を書くこともあった。

 そして2012年夏のある日、某テレビドラマ制作会社から私宛にメールが届いた。このとき会ったのが「ドクターX」の作り手たちである。

(フリーランス麻酔科医 筒井冨美)

*続編はダイヤモンド・オンラインで5月16日(水)公開予定です。