紅白歌合戦では「MISIAスペシャル」を披露するMISIAさん紅白歌合戦では「MISIAスペシャル」を披露するMISIAさん(写真は大阪・関西万博「ジャパンデー」での歌唱) Photo:SANKEI

現在、世界中で日本の音楽、いわゆる「J-POP」が愛聴されています。音楽評論家の久道りょうさんはこの流行を、歌手の「歌声」に注目し、分析しています。『なぜ、J-POPは世界の心をつかむのか』(青春出版社刊)から紅白歌合戦に出演する歌手の部分を抜粋しつつ、紅白歌合戦を最大限に楽しめるように大幅に加筆・修正した特別記事です。

「上手さ」だけではない「歌声」の魅力

 今、世界のあちこちで日本語の歌が流れています。

 街角のカフェだったり、ビーチサイドだったり、そして、街角だったり…

 日本語を理解しない普通の人たちの普通の暮らしの中に日本語の曲が溶け込み、日本のアーティストの歌声に耳を傾け、感動しているのです。

 これは、ほんの数年前までは考えにくかった光景です。

 なぜ、日本語のままの歌が、世界中で受け入れられているのでしょうか。

 その理由のひとつに、私は「歌手の歌声」があると考えています。

「声」は、人類が最初に手にした楽器です。

 歌は、その声に「ことば」をのせ、感情を運びます。意味が分からなくても、声の震え、息づかい、間合いは、聴く人の心に直接触れてくる。いま世界で起きているJ-POPの広がりは、その事実を雄弁に物語っています。

 日本語は、5つの母音を基盤にした言語です。

 拍は等間隔で、強く主張するよりも、感情の揺らぎを静かに伝える性質を持っています。ひとつひとつの音が空気に溶け、余白を残しながら心に届く。その響きが、速いビートに慣れた世界の耳にやすらぎや新鮮さとして響いているのではないでしょうか。