ある日、上司の管理が異常に厳しいという匿名のパワハラ告発文が、郵便で社長以下数名の幹部に届きました。被害者が特定できないまま、人事部はどのような手を打ったのでしょうか。(産業カウンセラー 松岡 翠)
人事部長の突然の訪問で
見せてくれた匿名の告発文
「明日、そちらのオフィスにお邪魔したいのですが、1時間くらい、お時間をいただけますか?」
ある日突然、ハラスメントの相談業務を行っているメーカーの人事部長からそんな一本の電話を受けました。
その会社の規模は、従業員数600名ほど。ある地方都市に本社があります。東京に事務所のある私のところに、その会社から時間とコストをかけてわざわざやって来る、しかも「明日に」というのですから、何か緊急を要するトラブルが発生したのではないかと、想像されます。
翌日、人事の部長と課長が2人揃ってやって来ました。そして部長がカバンの中から、A4の用紙を取り出し、私の方へと差し出したのです。
松岡:「何ですか?これ…」
人事部長:「お読みいただいた通りです。この文書が、昨日、社長以下の役員全員と、人事部の私のところに郵便で届きました」
いわゆる告発文です。それは技術系の部署において、課長Aさん(男性)が部下にパワハラをしている、というもので、以下のようなことが書かれておりました。
・仕事の進捗状況について、5分単位で何をしているかを報告書に記入させる
・毎年恒例の花見に、「妻の体調が悪いので、帰宅して子どもの面倒を見なければならない」と部下が申し出たところ、「これは絶対に全員参加だ」と参加を強要された
――等々。