ルーレットを観察、儲けを出した人も…ルーレットの数字には出方に偏りがある。なぜなら物理的な欠陥が起こっていることもあるからだ。実際に出方に偏りのあるルーレットを観察することで、儲けを出すことに成功した人もいるようだ

要約者レビュー

「ギャンブルの必勝法」と聞いて興味をそそられない人は、おそらくほとんどいないだろう。実際ギャンブルは、これまで数多くの人の心を惹きつけてきた。

「ギャンブルの必勝法」というと、「運を味方につける方法」などとして語られていることが多い。しかし本書『完全無欠の賭け――科学がギャンブルを征服する』ではそうした話など、一切出てこない。

完全無欠の賭け『完全無欠の賭け――科学がギャンブルを征服する』
アダム・クチャルスキー、柴田裕之(訳)、320ページ、草思社、1800円(税別)

 本書が明らかにするのは、科学者たちが「運」や「偶然性」について考え、あらゆるゲームの仕組みを解明し、勝つ方法を研究してきた軌跡だ。ルーレット、宝くじ、スポーツベッティング、ポーカー、ブラックジャック――ギャンブルについての研究はやがて確率論やゲーム理論、カオス理論につながった。最適戦略の考え方も、ギャンブル研究から生まれた側面が大きいという。

 ギャンブルで楽に勝てる方法を見つけるために本書を手に取ると、もしかしたら肩透かしを食らうかもしれない。とはいえ科学にもとづいた戦略を実行した際の成功談や苦労話も盛りこまれており、単純に読み物としてもおもしろいつくりになっている。

 著者は「絶対に勝てない」ゲームもないが、「絶対確実に勝てる」システムもないとしている。ギャンブルで儲けるためには地道な研究の積み重ねと周到な準備、そして柔軟な発想による創意工夫が必要なのだ。ギャンブルで儲けたい人も、数学や統計学に興味がある人も、それぞれ読む意義のある一冊である。(池田 明季哉)

本書の要点

(1) ギャンブルの研究は、数学や統計学の発展に大きく寄与してきた。
(2) 物理学的な知見を用いれば、ルーレットで出る目を高い精度で予測できる。
(3) 宝くじを確実に当てる方法を見つけ出し、利益を出しつづけているシンジケートが存在する。
(4)スポーツの試合結果を当てるスポーツベッティングは、もはやギャンブルというよりも投資と化している。
(5)「絶対に勝てない」ゲームはないが、「絶対確実な」ゲームもない。ギャンブルで勝ちつづけるためには、地道な研究と周到な準備が必要である。