とはいえ、今は目の前の仕事を続けることで精一杯の毎日。「早く1人前の職人として独立したい」とBさんは語る。

 Cさん(23歳)は実際の現場を見に行って、職人の姿がカッコいいと思った。しかし1年経った今も、なかなかその人のような動きはできない。でも、働けばお金がもらえる。会社や自分自身だけでなく、実際に家を購入されるお客さんに対する責任があることを感じた。
 
 同社ではこれまで、まだハローワークやサイトなどに求人を出したわけではなく、サポステや生活困窮者自立支援などでセミナーを行い、興味を持った人に見学に来てもらっている。同社のホームページでも、こういうプログラムを行っていることを知らせている。対象者は、チラシやホームページを見て応募する。障害の有無は関係ない。ただ、仕事の内容から屋根の上に登って仕事ができる範囲が条件となる。もちろん、性別も関係ないという。
 
 同社で人材の初期教育を担当している、総合外装事業部の鈴木徹・杉並営業所長は、こう説明する。

「若手の屋根職人が不足しており、解消策のひとつとしてこのプログラムを始めました。我々はボランティアではなく、一企業として彼らを育てなければならない。正直、戦力化には時間がかかりますが先行投資でやっています。将来自立し活躍してくれれば十分です」

前例がない取り組みでも
変わり始めた彼らを信じたい

 成り手としては、今までない人たちを育てている。お手本がなく、前例のない取り組みだ。

「僕らも初めてのことなので、手探りの状態。ただ、彼らが1歩踏み出したということは、自分を変えたいということだと思う。色々な心が芽生えてきたのを、後押しはしていきたいということです」(鈴木所長)

 同社の土井氏は、「他では例がなく、試行錯誤でやってきた。1年経って、実績が見えてきた段階。これから多くの人材を受け入れたい」という。

 就労が長続きしない背景には、当事者たちの間からも「雇用される前に、お互いに知り合えるようなマッチングの機会が欲しい」との要望が根強かった。そういう視点からも、前例のない同社の“お見合い期間”のような制度は、興味深い試みと言える。

(ジャーナリスト 池上正樹)

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