裁量労働制では、事業者側が労働者の働く場所や時間を指示しないとともに、事業者側には労働時間数を把握することは義務とはされていない。だが、労働契約法、および、労働安全衛生法で労働者に対する安全配慮義務、健康確保義務は定められている。

 さらに2015年、労働組合は勤務間インターバル制度の対象者の拡大を春闘で要求した。一般社員の長時間労働を削減したいと考えたからだ。

 だが、会社側からは「スピードが遅くなることによる企業間競争力の低下」の懸念が示された。「一般社員については、36(さぶろく)協定の締結によって労働時間を管理していることから、勤務間インターバルは不要ではないか」「日本ではまだ知られていない制度であることから、時期尚早ではないか」との指摘もあったという。

 また、このときは社員からも「顧客に迷惑がかかる」「チームで仕事をしているので、業務が回らなくなる」「自分はもっと働きたい」「仕事をここまでのレベルまでは高めたいとき、制度は足かせになる」と意見や戸惑いの声が上がった。どの世代からも満遍なく、そのような声はあったという。

 人事部では「全社員に勤務間インターバル制度を導入することで、社員のモチベーションやパッションが下がってしまうことは意味がない」と懸念した。

 だが、労働組合にとって、長時間労働の解消は労使間交渉の重要課題だった。長時間労働が原因となる体調不良や、家族との時間が失われることは幸せな生き方ではない。このため長時間労働対策として、36協定の遵守徹底や職場巡回などを労使で実施していた。

 春川さんは、当時の状況をこう説明する。

「労使間の長時間対策は、実は『時間外労働を前提としている』と気づきました。それでは、誰もが休息時間に対する意識が芽生えず、長時間労働が減るわけがありません。そこで、1日の限られた時間を仕事中心ではなく、仕事以外の時間の確保を前提とした働き方に発想を転換すべきではないかと考えました」

 人事部の茂木さんも「常に社員がベストコンディションでいられ、生産性を高められる環境を整備することは大事であると考えました」。

 そこで、労使でこの課題に取り組むことになった。

◎勤務間インターバル制度導入企業