むろん、池袋の中華料理店は数えきれないほどたくさんあるので、私が店名を知らなくても別に不思議ではない。

 だが、少なくとも、東京の中国関係者の間でとても有名な店が、中国人のグルメの女性から「おいしくない」と酷評され、もっとおいしい店に通っているという話は、私にとって新鮮な驚きだった。

在日中国人が行く中華料理店と
日本人が行く中華料理店はぜんぜん違う

 これは一体、どういうふうに解釈したらいいのだろう……。私や私の中国関係の友人たちが、たまたま味オンチなのだろうか、と首を傾げたのだ。

 その日は各自が好きな料理を注文し、テーブルにはたくさんの料理が並べられていた。遅れてきた女性がそれらをあまり食べようとしないので、「好きな料理を注文していいですよ」と言ってみたところ、内臓系の料理と辛い鍋料理を注文。

「みんな、辛いのは大丈夫ですか?」と気遣ってくれたのだが、その2つの料理は、日本人であれば、ほとんどの人が注文しないと思われるような、日本ではかなりマイナーな料理。案の定、その料理が運ばれてきても、他の友人たちは手をつけず、彼女一人だけが食べていたのが印象的だった。

 これは今年初めの小さな出来事だったが、これ以降、私の頭の中にはスッキリしない、ちょっとした“引っ掛かり”が常にあった。

 在日中国人の人口は70万人を超える。一口に「中国人」といってもその出身地はバラバラだし、料理の好みも人によって180度異なる。それぞれが好き勝手に、自分が行きたい中華料理店に行っているのだろう。当然といえば当然だし、それでいい。

 この女性の出身は南京だったが、もしあの場に大連出身の人が同席していたなら、きっと違う料理を注文していただろうし、その店の料理を「おいしい」と思った可能性もある。人の評価なんて、いちいち気にしていても仕方のないものだ。

 ちなみに、その店は「中国の東北料理」がメインだが、日本の多くの中華料理店がそうであるように、それ以外のメニュー(上海料理、四川料理)もたくさんある。よくわからない日本人が東北以外の料理(その店にとっておススメではない料理)を注文して、失敗してしまい、店を評価してしまうこともよくある。