大きな組織にいると、どこまで偉くなったかが重要であるという価値観に、知らず知らずのうちに「侵されて」いくのである(幸い中堅中小企業の場合、オーナーとそれ以外の違いの方が、役員と平社員の違いよりも圧倒的に大きい。社内で偉さを競っても仕方がないことをみんな知っている)。

 その会社においてたまたま能力を発揮できた、あるいは職務上の必要性があったから自分が引き上げられたにすぎないのに、さらには、その際、自分が「引き立てられた」経緯や評価についても、適切公平だったかどうかは甚だ疑問であるにもかかわらず、である。
 
 しかも人生100年時代、OB会やSNSでの交流で、そのコミュニティーはもしかしたらほとんど永遠に続くかもしれない。そこでは相変わらず現役時代の肩書がモノを言う。もちろん実利面でも無視できない。退職後の報酬にも「どこまで偉くなったか」が色濃く反映されているのだ。
 
 だとしたら、すごく偉くなってしまうか、それとも早くその価値観から抜け出して、自分なりのアイデンティティーを築ける人が幸せなのかもしれない。実際に大企業に勤務し続けるか否かは問題ではなく、例えば、大企業にいながら研究専門職的なポストについて、学問の世界を中心に生きるとか、そこそこの閑職をあえて志願し、自分の好きなように仕事ができる場をつくるなど。ともかく「出世競争」から(精神的に)「一抜けた」と言えるような働き方を考えてみることも大切なのではないかとも思える。

 以上、大企業に勤める問題点を語ってみた。他にもいろいろ「イケてない」ところはあるだろう。実際には大企業も多様であるし、中堅中小企業もまた然りである。自分で起業するのにも良し悪しがあるし、何がよいか、何が成功で何が失敗なのか、結局のところわからない。

 最終的には、自分の生き方次第ということにならざるを得ないのだが、ほんに人生は難しい。何が正解か、30年以上仕事をした今になってもわからないままである。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)