強みは「メンタルのブレなさ」
目の前の盤面だけに集中する

――芝野七段は中国ナンバーワン棋士の柯潔九段を破るなど、大活躍されています。ご自身の強みはどこにあるとお考えですか?

 プロになった頃は序盤が苦手で、中盤以降の読みが人と比べて得意なのかなと思っていたのですが、最近では囲碁の内容というよりも、メンタル面が強みだと考えるようになりました。感情に左右されないところと、相手が誰でも普段通り打てるというところです。柯潔九段と対局した時も、あまり緊張しなかったです。日本でも負けが込んでいる時期だったので、負けてもともとだ、と思って気楽に打ちました。

――それは驚きです。日本人棋士は逆転負けも多く、メンタル面が弱いという印象がありますが、芝野七段は対局中も対局後も、感情の起伏が少ないのでしょうか。

 そうですね…普段から、重要な対局で勝っても大きく感情が高ぶることはないですし。対局中も、目の前の盤面だけに集中しています。感情の揺れ動きが少ないのが、他の日本人棋士とは違う点なのかな、と思います。

――芝野七段を除けば、世界戦では井山裕太六冠が、ただ1人で気を吐いている状況で、日本は中韓にかなり後れを取っています。芝野七段は柯潔九段の他にも、韓国ナンバーワン棋士の朴廷桓(パク・ジョンファン)九段とも対局されていますが、世界との差はどこにあると思いますか。

 勝負どころでしっかりと勝負を決めきる力です。はっきりしたミスがほとんどないうえに、こっちが少しでもミスをすると、一気にやられてしまう。そういう決めどころでしっかり決めてくるという部分を一番感じました。経験の部分でも差を感じます。ただ、日本のトップ棋士の実力と、中韓のトップ棋士の差はわずかだと思います。

――具体的に言うと、経験の差はどういった部分にあるのでしょうか?

 中韓の棋士は、世界戦を数多くこなしていますし、中国の棋士は負けたら罰金、というような対局を幼少期からこなしています。なので、形勢が悪くなっても粘り強く頑張ってくる底力があるうえに、ほんのわずかでも可能性があったら諦めない。日本では、負けだと思ったら投げ場を作って投了するという風潮があるので、そういった勝利への執念にも差を感じます。