昨年12月に就任した井出健義社長は、筆頭株主である伊藤忠商事の出身。外部出身者ならではの経営手法について聞いた。


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──2008年10月に顧問としてヤナセへ転じてから3年半がたった。商社時代の経験が、ヤナセの経営のどのような点に生かされているのか。

 09年に、全社共通の投資基準を策定し、フリーキャッシュフローで事業の可否を判断する仕組みを導入した。多種多様な事業部門を抱える商社では、事業のリスク・リターンを測る習性が染み付いている。ヤナセでは、どんぶり勘定の企業文化が温存されていた。

──具体的にはどのような新基準を策定したのか。

 基本的なルールは二つある。一つ目は、販売店1店当たりの売上高10億円を達成すること、あるいは達成見込みであること。二つ目は、販売店における投資回収年数の厳格化だ。ヤナセへ赴いた直後に、約170カ所の直営販売店のほとんどを視察したが、それまで、販売店の随所において収益に見合わない投資がまかり通っていたと感じた。筋肉質で身の丈に合った経営の実践を徹底した。もっとも、今年2月に、米ゼネラル・モーターズの旗艦店となる札幌支店を移転・拡張したように、攻めの投資も惜しまない。

──円高進行を追い風に、装備が拡充されたり、金利減免で割安感のある輸入車販売は好調に推移している。今後の市場動向をどう読んでいるか。

 昨年、純輸入車販売(逆輸入車を除く)は20万台を回復した。今年も好調は続き、リーマンショック以前と同水準の23万~24万台となる見込みだ。ダブルエコ(エコノミー、エコロジー)とダウンサイジングの訴求が新規顧客の開拓につながっている。