トルコリラ下落に歯止めがかかりそうにない。それは通貨防衛策が講じられる可能性が極めて低いからだ。
トランプ米大統領が、トルコに対してアルミニウムと鉄鋼の関税率を2倍に引き上げると発表した10日、トルコリラは一時、前日比で3割弱値を下げ、1ドル=7リラを割り込んだ。
2017年のトルコの経常収支赤字471億ドル、18年3月末の短期対外債務残高1222億ドルに対して、「6月末の流動性のある外貨準備高は740億ドル」(西濱徹・第一生命経済研究所首席研究員)と心もとない水準にある。
通貨防衛のためにはまず利上げをするのが定石だ。しかし、エルドアン・トルコ大統領は利上げを否定し、それどころかトルコ中央銀行に利上げをしないよう圧力をかけているとみられる。現に通貨安基調が続く中、7月にトルコ中銀は利上げを見送った。中銀の独立性が担保されていないこともリラ売りの要因だ。