私ならこれほど入院が短期化傾向にあるなら、医療保険は不要ではないかと考える。病気全体でもがん入院でも80%以上が30日以内に退院をする。1ヵ月くらいの入院費なら、多くの人は持っている貯蓄でカバーできるだろう。

 病気にかかるお金の備えでまず知っておきたいのは、健康保険の「高額療養費制度」である。現役世代の窓口負担は医療費の3割であるが、この制度により、高額な医療費がかかったとしても自己負担が一定額を超えると、超過分の払い戻しを受けることができる。

 入院をしたことがある人は、とても頼りになる制度であることを知っている。反対に、自分も家族も入院や大病の経験がないと、高額療養費制度を知らないというケースが多い。

 たとえば、胃がんや大腸がんの手術で入院し、1ヵ月の医療費が100万円かかったとする。窓口で3割の30万円を支払うが、この制度により一般的な所得の人なら最終的な自己負担は約9万円。超過分の約21万円が後日戻ってくる。

 医療費の最終的な自己負担は1ヵ月10万円弱、これに入院時の食事代が1食460円加わる。入院した場合にかかるお金の目安は、日数にもよるが10万円前後と考えるといいだろう。

 以前、セカンドライフセミナーでこの話をしたところ、終了後に50代と思われるビジネスマン風の男性が私に近づいてきて「今日はファイナンシャルプランナーからリタイア後にお勧めの医療保険の話が聞けると思ってきたけれど…」と、ちょっと怖い表情で話しかけてきた。

 何か不満があるのかしらと、ドキドキして次の言葉を待っていたら「医療保険には入らない。10万円なら持っているから!」と言ってお帰りになった。どうやら、私の話に怒っているわけではなく、高額療養費制度について今まで知らなかったことに対し自分自身に憤りを感じていたよう。以来、私の中では「10万円なら持っているから!」は名言となっている。