トルコリラトルコ国内で起きた米国人牧師拘束問題をきっかけに大きく下落したトルコリラ。今後も下落は続くのでしょうか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 皆さん、こんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。

 さて、このところ、為替市場ではドル円相場がもみあいを続けるなかで、新興国通貨は下落傾向にあります。きっかけは、トルコで起きた米国人牧師拘束問題を巡りトルコと米国の対立が激化し、トルコリラが8月10日に、一時、前日比約2割も暴落したことです。この「トルコショック」を契機に、多くの新興国通貨が対米ドルで一段と下落しました。足元では、比較的景気の堅調なアジアの通貨にも通貨安が波及し、資金流出懸念から多くの新興国の株式市場が調整しています。

 こうした新興国の動揺がさらに広がれば、先進国の市場や経済にも伝播し、世界経済全体を失速させかねないとの見方が出てきました。そこで今回は、新興国通貨の今後の動きと、世界経済に与える影響について考えてみます。

「トルコショック」を契機に新興国通貨安が加速

 米国の利上げ継続を受けて新興国からの資金流出懸念が強まるなか、新興国通貨は年初から対米ドルで下落傾向にあります。特に、「トルコショック」の発生した8月以降は全体として下げ足を速めました。足元では、アジア通貨にも通貨安が波及しています。

 主な新興国通貨の年初からの下落率をみると、国によって大きな差がみられます。例えば、9月12日時点で最も下落している通貨を順に並べると以下の通りです。アルゼンチンペソ▲51%、トルコリラ▲41%、ブラジルレアル▲20%、南アフリカランド▲18%、ロシアルーブル▲17%、インドルピー▲13%、インドネシアルピア▲9%。

 これら下落率の高い通貨の共通点は、新興国のなかでも、経常収支の赤字や対外債務が大きく、外貨準備高が少ないなど、経済のファンダメンタルズが脆弱だということです。上記で示した通貨が大きく下落している国は、ロシアを除き、すべて経常収支が赤字です。加えて、トルコやロシア、ブラジルのように、対外関係の悪化や選挙の不透明感などの政治要因が通貨安につながっている国もあります。さらに、インドネシアなど、米中の貿易摩擦の拡大懸念が高まるなかで、中国経済との結びつきが深い国も影響を受けています。

 下落率が飛び抜けて大きいのは、5割下落のアルゼンチンと4割下落のトルコです。両国とも、経常収支赤字がGDP比で▲5%を超えるなど、新興国の中でも赤字の比率が高い上に、それぞれ固有の問題が加わったことで、投機筋に狙われ、下落幅が大きくなりました。両国の通貨は、選別されて売り込まれたといえるでしょう。