医療スタッフに血圧を測ってもらう男性写真はイメージです Photo:PIXTA

血圧は低く抑えるほど健康によい。大規模な研究で示された結果であっても、目の前の患者にそのまま当てはめられるとは限らない。同じ治療を受けても、その効果に大きな差が生まれるのはなぜか。数値だけでは見えてこない、研究結果の読み解き方とは?※本稿は、内分泌代謝科専門医・疫学専門家の井上浩輔『「もしも」で命は救えるか?因果推論入門』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

血圧を厳しく下げることは
本当に健康に良いのか?

 高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれます。自覚症状はないのに、気づかないうちに血管に負担をかけ、やがて心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気を引き起こす。日本に限らず、世界中で頻度が高く、適切に治療すべき生活習慣病の1つとなっています。

 では、その血圧をどこまで下げるべきなのでしょうか。

 これまでも「血圧は高いほど危ない」という事実は知られていました。しかし、医療の現場には大きな迷いがありました。なぜなら、「厳しく下げればいい」とは限らないからです。

 血圧を下げすぎると、ふらつきや失神、腎臓の機能低下といった副作用が増えることもあります。だからといって、緩やかに下げれば、心臓病や脳卒中のリスクが減らないかもしれません。

 当時のガイドラインでは、上の血圧(収縮期血圧)は140mmHg未満を目指すことが標準とされていました。同時に、「もっと厳しく、たとえば120mmHg未満を目指すべきではないか」という声もありました。

 しかし、それが本当に命を救うのかどうか、確固とした証拠はありませんでした。