トルコリラが急落し、トルコ経済は混乱しているトルコリラが急落し、多くの金融専門家がトルコ情勢の展開を固唾をのんで注目している Photo:AP/AFLO

トルコと米国の関係悪化は
世界経済にとって大きなリスク

 現在、多くの金融専門家が、トルコ情勢の展開を固唾をのんで注目している。

 8月10日、トルコが米国人牧師を拘束していることに対し、米国のトランプ大統領はトルコからのアルミと鉄鉱の輸入関税を大幅に引き上げた。それに対しトルコのエルドアン大統領は、米国人牧師の解放を拒否し真っ向から立ち向かう姿勢を示した。

 米国とトルコの関係悪化から、トルコリラが米ドルに対して約20%急落した。そうした為替市場の混乱をきっかけに、多くの投資家がリスクオフのオペレーションを進め、株式・為替などの金融市場が世界的に混乱した。それを“トルコショック”と呼ぶ。

 これまでトルコでは、エルドアン大統領の強権体制が強化されてきた。エルドアン大統領は金融政策にも介入し始めた。それは、トルコ中銀の独立性毀損を意味する。米国との関係悪化を受けたトルコからの資金流出圧力の高まりに、通貨防衛のための利上げが困難との見方が重なり、リラが急落したのである。

 米国とトルコの非難の応酬は、互いを傷つけあうことになるだろう。トランプ大統領の強硬姿勢は世界の政治・安全保障・経済の基軸国家である米国への信頼感を低下させる。エルドアン大統領の強権体制は、資金流出やトルコの信用力低下につながる。

 それは、世界の政治・経済情勢を不安定にさせる恐れがある。状況次第では、トルコ関連のリスクから欧州の銀行株への売り圧力が高まるなどし、世界的にリスクオフが進むこともあるだろう。今すぐ世界経済が混乱に陥ることは考えづらいが、米国とトルコの関係悪化は、世界経済にとって無視できないリスク要因と考えるべきだ。