つまらないけど正しい投資

――サブプライム問題で市場の動揺が続いています。こんなときに投資するのは危険なのではないですか。

 投資とはリスクから利益を得る行為ですから、そもそもすべての投資は危険です。そのうえ、当たり前の話ですが、安いときに買わなければ投資の果実は手に入りません。その意味で、相場の下落は格好の投資機会を提供してくれます。

――そうは言っても、いつか暴落しそうで怖いのですが。

 暴落すればもっと安く株が買えますから、さらにチャンスは広がります。

――そんなに楽観的でいいのですか。

 10年単位のスパンでいずれ相場が回復するのなら、その間にどれだけ投資単価を下げられたかでパフォーマンスは決まります。リタイア直前で株価が暴落したならショックかも知れませんが、大半の長期投資家にとって、強気相場が長く続くよりも、株価の下落はずっと喜ばしい事態でしょう。

――喜べといわれても、釈然としないのですが。

 ETFを使って世界市場をまるごと保有するのは、不可知論と楽観主義の投資法です。主義主張の異なる人にまで勧めようとは思いません。地球温暖化や環境破壊でいずれ世界が滅びるのなら、投資などなんの意味もありません。それでも知恵と努力で市場を打ち破りたいのなら、思う存分やってみればいいでしょう。ただし、もしあなたが家族と過ごす時間を増やしたり、仕事や趣味に打ち込みたいと思えば、時間コストを含めた総合的なパフォーマンスで、世界市場へのインデックス投資を上回る投資法は存在しないと思います。

――具体的にはどうすればいいのですか?

 毎月1回、決めた額だけETFを買う。それだけです。投資に費やす時間は5分程度で、まったくの初心者でも簡単にでき、プライベートバンクの一任勘定を上回る運用成績が達成できます。

――本当にそんなうまくいくのですか?

 思想的に正しい、というのはそういうことです。それでもこの投資法が少数派なのは、たぶん、正しすぎて面白くないからでしょう。

 多くの投資家は恐らく「自分だけが儲けたい」と思っています。だから、株式の個別銘柄や自分だけの売買法の研究に熱心です。しかし確率としては、橘さんの言うように世界中のインデックスに長期で投資するほうが、間違いなく利益を最大化し損失を最小化できるでしょう。それがつまらないのは別問題です。投資は面白いからやるのではなく、必要だからやるものなのでしょう。


橘玲プロフィール
作家。1959年生まれ。早稲田大学卒。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融情報小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)は30万部の大ベストセラーになる。を発表。著書に『得する生活』『雨の降る日曜は幸福について考えよう』『永遠の旅行者』(山本周五郎賞候補)『マネーロンダリング入門』(以上、幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(以上、文藝春秋)、翻訳書に『不道徳教育』(W.ブロック著 講談社)がある。