病気やケガ、事故・災害といった突然降りかかる災難に伴う値段はもちろん、“いつかはかなえたい夢”をいざ実現に移すときの値段まで、「いざというときの値段」を徹底調査した。
病気の治療費(保険適用)の自己負担分は680万円
22歳で就職した人の70歳までの一人当たりの総医療費は2264万円、このうち、自己負担の医療費は680万円(28歳で結婚、30歳と32歳で子どもが誕生した家族と想定)。
これは複数の健康保険組合に属する21万1000人分のレセプト(診療報酬明細書)を基に、日本医療データセンターが算出した平均額である。
ガンなどの大病となれば、入院医療費は100万円を超える。だが健康保険制度により、自己負担は3割。1ヵ月の治療費が限度額を超えた場合には、一定の医療費が払い戻される「高額療養費制度」もある。長期の難病には医療費の一部を国や自治体で負担する「難病医療費助成制度」もある。公的な保障は意外にも手厚い。
「日本の医療は社会主義。アダム・スミスが言う“神の手”ではなく、厚生労働省という“お上の手”が支配している」
東京医科歯科大学大学院の川渕孝一教授は、日本の医療制度をこう表現してはばからない。
国民皆保険であり、その医療保険から医療機関に医療費を支払う公的制度、診療報酬制度によって医療が成り立っているからだ。
もっとも、この「社会主義的な恩恵」が今後もずっと続くと楽観的には考えられない。周知のとおり、高齢化社会に伴い国民医療費が高騰しているからである。