なぜ、日本人なのに、日本人相手に伝わる文章が書けないのか? 書いた本人はきちんと書いているつもりでも、伝わっていなければ意味がありません。説得力をもたらすには、決まった型を使えばいいのです。
「うまく書けない」「時間がかかる」「何が言いたいかわからないと言われてしまう」――そんな悩みを解消する書き方を新刊『人一倍時間がかかる人のためのすぐ書ける文章術 ムダのない大人の文章が書ける』から紹介していきます。
3点セットで
説得力がバツグンに上がる!
納豆が好きだ。なぜなら( )。
たとえば、( )。
文章に説得力を持たせたい。そう思ったときにイメージすべきは、自分とは意見が正反対の人です。ちょっと頑固者で、何か言うたびに「それは違うと思うな~」「それはあり得ないよ」と頭ごなしに否定してくる人、身近にいませんか? そんな誰かを思い浮かべてください。
逆の意見を持つ、厄介な頑固者─そのような人でも説得できるように、話を入念に組み立てるイメージで書いてみましょう。一番手強(てごわ)い相手を想定して書けば、結果として多くの人を説得できる文章になります。
ここでも、そんな想定で文章を書いてみましょう。
まず、あなたは納豆が大好物の人だとします。毎日3食食べてもかまわないと思うほどの納豆愛好家になったつもりでお願いします。
イメージはできましたか?ただ、納豆の場合、苦手な人もいますね。「納豆はあんまり……」という友人に、大好きな納豆の魅力を伝え、興味を持ってもらいたい。さあ、どのように語りますか?(ここで一度、画面から目を離して文章を考えていただければ幸いです)
さて、こういう文章だと、どうでしょうか。
納豆好きな人は、ウンウンと頷いてくれそうですね。ただ、それ以外の人が読んだら?
正直な話、鬱陶(うっとう)しいのではないでしょうか。
最高=いい=大好き=やっぱりいい=素晴らしい=万歳と、ずっと納豆を讃え続けるばかりで、納豆を特に好きでない人からしたら、共感するどころか、逆に引いてしまうはずです。
少し手を加えてみましょう。
「なぜなら~」と、理由の説明が入りました。ただ、これも十分とはいえません。おいしいと思っていない人からすれば、共感・納得できないことを繰り返されているだけです。
多くの人に納得してもらうには、意見・理由にもう一つ、具体例を加えた3点セットで語るのがおすすめです。事例は客観的な証拠で、誰もが認めざるを得ませんからね。
「100パーセント共感!」とまではいかないにしても、ある程度、頷くところまでは持っていけます。
たとえ納豆を好きでない人であっても、多種多様な味付けの仕方がこの世に存在するという客観的事実の部分までは否定することができません。「まあ、たしかにね……」と受け入れるしかないのです。
理由付けがもう少し主観的であっても、具体的に語ることで「たしかに」という頷きを引き出しやすくなります。
このように詳しく語れば、ただ「おいしい」と連呼するよりも、客観的な意見に聞こえますね。
このように、意見・理由・具体例を3点セットで述べてこそ、説得力が発揮されるのです。3点セットで書くことを心がけてください。
慣れるまでは、多少わざとらしくとも、意見の後に接続語「なぜなら」「たとえば」で始まる文を付ける習慣を持つといいでしょう。
慣れてきたら、接続語を取ったり、使う順序を入れ替えたりして、文章ができるだけ自然に流れるよう工夫してみます(この段階になれば、中・上級者です!)。
3点セットを自分のものにすれば、その後は理由を2つ挙げるなど、さらに複雑な文章にも発展させていくことができるでしょう。