なぜ、日本人なのに、日本人相手に伝わる文章が書けないのか? 書いた本人はきちんと書いているつもりでも、伝わっていなければ意味がありません。
「うまく書けない」「時間がかかる」「何が言いたいかわからないと言われてしまう」――そんな悩みを解消する書き方を新刊『人一倍時間がかかる人のためのすぐ書ける文章術 ムダのない大人の文章が書ける』から紹介していきます。
読みにくい文章を直そう!
厄介な取引先とのトラブルを放置してはいけない。
1.取引先
2.トラブル
ふたえにしてくびにかけるじゅず。
これは、一休さんが出したとも、近松門左衛門が出したともいわれている問題です。この文はどういう意味でしょうか。
面倒なことに、「ふたえにしてくびにかけるじゅず」という文は、次のような2通りの解釈ができてしまいます。
2.二重にし、手首にかける数珠。
読点(、)や漢字変換などで区切りをはっきりさせなくては、誤解が生まれてしまうわけです。
これは、冒頭で出題した「厄介な取引先とのトラブルを放置してはいけない」も同じです。問題を出しておいて恐縮ですが、この文だけでは、取引先が厄介なのか、トラブルが厄介なのか決められないのです。本来は、読み手がどちらか迷わないよう、明確に書くべきでしょう。たとえば、
・取引先とのトラブルが厄介なことになったら、放置してはいけない。
というように書き改めるべきなのです。
区切り目がわかりづらく、読みにくい文を挙げます。矢印の先の改善例と見比べてください。
×人気歴史小説最新刊第五巻は来月発売!
↓
○人気の歴史小説、最新刊(第五巻)は来月に発売!
×まだなおさりげない根回しが求められる。
↓
○まだなお、さりげない根回しが求められる。
×ヒットは確実と言われたが振るわずに終わった。
↓【逆接の接続助詞「が」の後には「、」を】
○ヒットは確実と言われたが、振るわずに終わった。
×子どもの頃から長年アメリカで暮らした影響が表情や仕草に感じられる。
↓【長い主語「子どもの~影響が」の後には「、」を】
○子どもの頃から長年アメリカで暮らした影響が、表情や仕草に感じられる。
少し時間を空けて、自分自身で音読してみると、読みづらい箇所がよくわかります。上の×のような文はスムーズに音読できません。
また一般に、こうした読みづらさは一文が長くなるほど発生しやすいものです。主語と述語関係がねじれてしまう現象も長い文ほど発生します。それらを防止するためにも、一文はあまり長くならないようにしたいもの。平均で30字前後、最大でも50字程度におさまるよう心がけましょう(目安としては、この本の1行が約40字です)。
モットーは「一文一事」。多くの事柄を一文に詰め込もうとせず、潔く文を切るのです。
たとえば、「○○ので、~。」という理由+結論の文をよく見かけます。それでは長くなりがちなので、「(結論)。なぜなら(理由)。」という順の二文にしましょう。短い文×2にしたほうが読みやすいのです。
また、一文が長くなる人というのは、長い修飾語を書きがちです。修飾語とは、後ろの言葉を詳しく説明する部分のことです。「赤いリンゴ」の「赤い」、「遥かかなたの惑星」の「遥かかなたの」です。文が長い人は、
・高校の演劇部で一緒だった市立病院の看護師の先輩
という書き方をしがちなのです。この後ろに述語が続くと、さらに長い文になります。1回読んだだけでは、意味を理解できない文ができてしまうのです。
・高校の演劇部で一緒だった先輩は、市立病院で看護師をしている。
長い修飾語は避け、主語と述語のかたちにするなど、文の構造をわかりやすくしましょう。すらすら音読できる、簡潔で読みやすい文章を心がけましょう!