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本記事では、2017年刊行からひっきりなしに拝受している読者からの感想の中で、とりわけ反響の大きい、「文章のわかりにくさ」を潰すための、もっとも効果的な方法を紹介する。(構成:今野良介)。
あなたがメールや、レポートや、プレゼン資料などを書いたとき、
「もっと、わかりやすくしてくれないかな」
「なんか、伝わってこないんだよね」
と、言われたことはありませんか。
この記事では、「文章のわかりにくさ」をつぶすための、いちばんかんたんで、いちばん効果のある方法をお伝えします。
ちょっと、次の文をご覧ください。
「小学生の日記」にありがちな文です。
「きょう、えんそくでおべんとうをたべました。たのしかったです」
「おてんきがよくなったのでプールにはいって、うれしかったです」
「ずこうのじかんに、◯◯くんといっしょにかみのかいじゅうをつくって、おもしろかったです」
あなたは、この3つの文の「幼稚さの理由」を、説明できますか?
幼稚さの元凶となっているのは、「ひらがなの多さ」ではありません。
「今日、遠足でお弁当を食べました。楽しかったです」
「お天気が良くなったのでプールに入って、嬉しかったです」
「図工の時間に、◯◯君と一緒に紙の怪獣を作って、面白かったです」
どうでしょう。漢字を入れたところで、読みやすくはなったかもしれませんが、幼稚さは解消されていません。
幼稚さの元凶は、「楽しかった」「うれしかった」「おもしろかった」というフレーズです。そして、これらはすべて、「形容詞」なのです。
形容詞は、その多くが、書き手が経験したことを通して抱いた、書き手の「感情」や「感動」です。しかし、文章の読み手は、書き手と同じ経験をすることはできません。だから、形容詞だけを書いても、何に感動したのかが伝わらないのです。
だからこそ、書かなくてはいけないことは、
「何が楽しかったのか?」
「何がうれしかったのか?」
「何がおもしろかったのか?」
その理由です。
つまり、「素材」なのです。
(※『超スピード文章術』で定義している「素材」とは、
「独自の事実」、「エピソード」、「数字」。です)
さて、それを念頭に置いて、先ほどの小学生の日記を手直ししてみましょう。
形容詞を、「素材」に置き換えるだけです。
「お弁当を食べていたら、おにぎりが1つこぼれて、草むらをどんどん転がっていった。先生が追いかけていって、先生も転んだ。先生がかわいそうだったけど、楽しかった」
「ずっと風邪をひいていて、昨日、今年初めて、大好きなプールに入れた。ひんやりして気持ちよかった。うれしかった」
「図工の時間に、ぼくが作った怪獣と、◯◯君が作った怪獣を戦わせたら、ぼくが負けてしまった。くやしかったけど、おもしろかった」
このように、形容詞を素材で具体化してあげるだけで、子どもの文章は、ぐっと「上手」になります。素材を書くことで初めて、読み手は、何が「楽しかった」のか、「うれしかった」のか、「おもしろかった」のかを感じることができるのです。
形容詞だけでは、読み手は「何に感動したか」がわからない。
その明らかな「欠陥」をそのままにしているから、幼稚に見えてしまうのです。
さて、小学生の日記は、この記事の趣旨をわかっていただくための例です。私は、当然ながら、大人も同じようなミスをおかしている、ということが言いたくて、これを書いています。
まず、1つ目の例です。
次の文をご覧ください。
「当社は、とてもいい会社です」
私は、書き手としてのキャリアを人材広告のコピーライティングから始めました。新人コピーライターの誰もがやってしまいがちな人材募集キャッチコピーの代表例が、これなのです。
コピーライターになったとき、真っ先に当時の上司に言われたのが、「わかるようで、よくわからない言葉を使うな」ということでした。「いい会社」というのは、その典型例です。
実際に、その会社は「いい会社」なのかもしれません。
でも、これでは人は動かないでしょう。何も伝わらないからです。
では、何を書かなければいけないのか?
「5年間、社員が1人も辞めていない会社」
「有給休暇を毎年全員が100%消化している会社」
「社長が年度末に金一封をくれる会社」
読者が知りたいのは、そうした「具体的な事実」です。
「いい会社」というのは、そんな魅力的な素材を、書き手が形容詞を使って無理やりまとめてしまった「表現」です。
「素材」を「表現」にまとめようとすると、抽象的になる。抽象的な表現は、読み手に伝わりにくいのです。
形容詞のわかりにくさは、長い文章になればなるほど、大きくなります。
次のページで、もう少し長い文章を例にして、「before→after」をやってみます。