プロ向けへシフトした状況を「築地魚河岸」の入店者に尋ねると、「市場移転が近づくに連れ、プロの買い出し客がどんどん増えてきており、とても盛り上がってきている」とのこと。「築地魚河岸」に入居する事業者は約60あるが、そのほとんどが元々の築地場内の仲卸である。

 つまり、築地にはこれまでと変わらずプロも一目を置く「魚の目利き」がおり、さらに豊洲よりアクセスもいいとなれば、「今まで通り仕入れは築地で」という事業者もいるはずである。特に銀座からのアクセスが良く、「築地魚河岸」は銀座の小規模な高級店ととても相性の良い関係にある。

 豊洲市場はスーパーや問屋など、どちらかというと大規模事業者向けの流通の施設となる一方で、築地は目利きが選んだ確かな品を求める小規模事業者向けの流通の街へと変貌を遂げようとしている。

「築地・豊洲の一極集中」が
移転によって変わる可能性も

 さて、ここまで豊洲市場の移転を周辺市場の動向も含めて眺めてきた。それらを踏まえていえるのは、築地・豊洲の一極集中が変わるかもしれないということだ。

 豊洲市場が開場してから、日々の流通がどのように変化するかは未知数な部分も多いが、もし混乱が長く続くようであれば、そこから離れていく事業者も多く出てくることだろう。そうなれば、周辺の卸売市場が存在感を増してくる可能性もある。

 また、「大規模なスーパーも小さな高級店も皆が築地で仕入れる」という一極集中型の流通が終わり、「大規模なスーパーは豊洲、小さな高級店は築地」といったように、より各々のニーズに合わせた流通が広がっていくことも考えられる。

 さらに豊洲市場は、物流機能そのもの以外にも、ブランド面でも課題を抱えているといえる。分かりやすく言うと、現時点で「築地の魚」と言われた場合と「豊洲の魚」と言われた場合では、人々のイメージが違ってきてしまうからだ。

 豊洲市場へと移った卸・仲卸業者にとっては、ブランド面での課題を抱え続けないためにも、新しい市場での流通を早期に安定させることが何よりも重要だ。豊洲市場での流通の早期安定は「築地の魚」のブランド力をも豊洲に移転させるために不可欠なことであり、元築地の魚河岸たちの底力がこれから発揮されることだろう。

 これまでブランド力の高かった「築地の魚」のポジションはどこへ行くのか。「豊洲の魚」がその覇権を引き継ぐことができるかどうかは、これからの動向次第である。 

(おさかなコーディネーター ながさき一生)