今さらなぜ?
新たな「上場親子会社」
日本の公開企業のうち約300社は他の公開企業が支配する「上場子会社」である。これとは対照的に、米国の「上場子会社」の数は片手で数えられる程度でしかない。なぜか。
これは証券取引委員会法と会社法が、日本のそれとは桁違いの積極性をもって、支配会社である「親」企業と少数株主、一般株主との間に内在する利益相反を注意深く取り締まることで「上場子会社」の設立を阻止しているからである。
利益相反は、支配する「親」企業が「子」会社を、特に「親」と「子」の間の経済的取引において「子」を犠牲にして「親」の利益とするように動かす立場にあることに根差している。「親」は通常「子」の収益や株価を上げるインセンティブに欠ける。収益および株価を上げるには、「子」が「親」に供給する商品やサービスの価格を上げる必要があるためだ。
また「親」は日常的に「上場子会社」を“貯金箱”として扱い、資本あるいは他のリスクにかかるコストを適正に反映する、市場に見合った利子を払うことなく、子会社に余剰資本を据え置いて利用する。そのため「上場子会社」の株価は、概して「主人」に対する「召使い」としての立場を反映した割引価格で取引される。
米国では、証券取引法と会社法の一般株主に対する保護により、「主人」が「子会社」を“使い走り”として扱うことがないよう、親企業と子企業双方の経営陣を厳しく調査する。
まず、日本とは異なり、米国における公開企業の取締役の過半数は独立した立場の者でなければならない。これは「子」の取締役の過半数が「親」とのつながりを持たないことを意味する。「親」と「子」の間のいかなる取引も、こうした独立取締役の過半数の承認を得なければ行うことができない。
さらに、米国の裁判所は潜在的な利益相反に対して極めて敏感である。
端的に言えば、米国の「上場子会社」は経営が煩雑になるだけでなく、所有構造に内在する利益相反に対する、絶え間ない訴訟の格好のターゲットとなってしまう。米国に「上場子会社」がわずかしか存在しないのは、経営に見合う価値より“もっと多くの問題”をもたらすからである。



