ADEKAによる日本農薬の上場子会社化に海外投資家や少数株主から反発の声が相次いでいる。Photo:PIXTA

東証第1部の化学品メーカーのADEKAが株式公開買い付け(TOB)により、同じく東証1部の日本農薬の株式所有割合を23%から51%に引き上げ、「上場子会社化」した。これに対し、少数株主や海外株主から反発の声が相次いでいる。なぜ、このような動きが問題視されるか。その問題点について解説する。(上智大学法学部教授、ニューヨーク州弁護士、外国法事務弁護士 スティーブン・ギブンズ)

ADEKAと日本農薬の取引は
海外では通用しない

 化学品メーカーのADEKA(東証第1部4401)が日本農薬(同4997)の株式所有割合を23%から51%に引き上げる。数年前であれば、このような動きに日本の投資コミュニティーや金融メディアから注目が集まることはまずなかっただろう。

 しかし、日本がコーポレートガバナンスのレベルをグローバルスタンダードに近づけようと試みる中、この取引は日本の会社法とその施行が複数の点でいまだ十分でないことを示しており、人々が眉をひそめる結果となっている。

 端的に言って、ADEKAと日本農薬の取引は海外では通用しないだろう。

 一般株主の利益をADEKAのような法人大株主の支配力から守ることができていない点で、日本国外では当然とされるコーポレートガバナンスの基本原則に到達するには、まだまだ道は遠い。

 日本農薬の一般株主が、ADEKAが日本農薬の51%支配権を買収したその“方法”(詳細は後述)について憤るのは当然だ。しかし、彼らはこの取引が何をもたらすかという点についてもっと心配すべきである。

 2018年9月28日、日本農薬のADEKAに対する第三者割当が完了し、日本農薬はADEKAに支配される、いわゆる「上場子会社」へと変わり、一般株主はADEKAが指名する日本農薬経営陣の意思決定に翻弄される無力な少数株主となってしまった。