これに対して、日本の公開企業には取締役会が独立したものでなければならないという条件が存在しない。しかも日本の裁判所はこれまで、「上場子会社」の株主が「親」法人との取引における不利な条件に対して訴えを起こす訴訟を、あまり受け入れてこなかった。その結果、「上場子会社」が日本のコーポレート・エコシステムのごく普通の一面として、企業の株式持ち合いと「戦略的」株式保有という関連現象と共に長年受容されることとなった。

 近年、東京証券取引所および政府の資本市場規制当局が「上場子会社」に内在する利益相反について懸念を表明し、そのような慣行を廃止するよう促してきたことは事実である。

 これに対応して、日本の「親」企業が一般株主の株式を(競争入札を行わないため、当然ながらほぼ常に安値となるが)買い取り、「上場子会社」の株式保有割合を100%とする「非公開化」が進んだ。現在日本の大手企業においては、「上場子会社」がコーポレートガバナンスのレベルを上げる目的に反するという一般的なコンセンサスがあることは間違いないだろう。

 こうしたことを背景に、ADEKAと日本農薬の経営陣が、「上場子会社」は良好なコーポレートガバナンスに反するというコンセンサスが確立した時代に、果たして別の「上場子会社」を設立することを良案と考えたことには首をかしげざるを得ない。

 別の言い方をすれば、では、ADEKAはなぜ日本農薬の株式保有割合を100%ではなく51%としたのか。

 日本農薬の株式を100%取得するには費用がかかりすぎ、ADEKAの支払能力を超えて資金を拠出しなければならないという当たり前の答えは、日本農薬の一般株主にとっては納得のいかないものである。51%取得することで、すなわち、ADEKAが全ての利益と支配権を半額で得ることができるなら、100%取得するために出費する必要があるだろうか。

 また、51%所有によってADEKAは日本農薬を連結子会社として扱うことができ、ADEKAの損益計算書と貸借対照表を膨らませることができる、とも述べている。

 これは当然ながら、日本農薬の少数株主にとっては何の利益にもならず、ADEKAにとっても単なるうわべの価値でしかない。

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合法かつ割安で支配権を取得する工夫

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