スタートアップ上場後の成長加速をテーマに活動するシニフィアンの共同代表3人が、ほろ酔い気分で放談、閑談、雑談、床屋談義の限りを尽くすシニフィ談。3人とも兵庫出身の関西人のせいか、やたらと早口、やたらと長話。でもピリッと、ちょっとだけ役に立つ。今回は、上場を境に経営の難易度がぐっと上がるのと同時に、非上場のほうがガバナンスが利いてしまう日本企業の状況を分析していきます。(ライター:石村研二)

経営者における車輪の再発明

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):ユニークで面白い点でもあるのだけど、日本の株式市場は上場のハードルが低いがゆえに、プロダクトの磨き上げに専念する延長で上場できるケースも多いんじゃないかとは感じます。そういう市場背景だからこそ、ベンチャーキャピタルも経営よりもまずプロダクトにフォーカスが偏りすぎてしまう。結果的に、オペレーショナルCEOで上場はできるけれど、上場した瞬間に投資家からはグローバル基準の本来のCEOロール(役割、機能)ってものを求められる。その認識やロールのギャップは大きいのかもしれませんね。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):オペレーショナルCEOがステップアップする際のハードルが、日本の場合は上場時に一気に来すぎるんじゃないかな。アメリカって上場時に求められる規模の水準が高いから、レイターステージで時間をかけて育てるじゃないですか。それに、シリアルアントレプレナーをはじめエグゼクティブクラスの流動性が高くて、経営経験がある人がいろんなフェーズの会社にいるから、いろんな場面で目端が利く。日本はゼロイチの経営者が圧倒的に多いから、どうしても経営実務については車輪の再発明みたいなことをしてしまっているという側面はあるんちゃうかなと。

村上:そうした状況の結果として、なかなか生産性が上がりにくい状況になりがちなのかもね。

IPOのタイミングで一気に上がる経営の難易度

小林:あと端的に言うと、特にマザーズの場合、上場後のタイミングで経営そのものの難易度が上がるケースが多いんちゃうかと思う。人事でよく言うところの100人、150人の壁みたいのに上場後に出あう会社が多いとか、一つの事業が成功して上場したけど、その後ポートフォリオ・コントロールに初めて出くわすことになるとか、エグゼクティブのインセンティブ設計が極端に難しくなるとか、経営の難しさの質が明らかに変わるっていう感覚はありますよね。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):上場前の経営者向けの参考書なんてあったらめちゃめちゃニーズあるんでしょね。とんでもなくニッチやけど(笑)実際には世の中の会社は誰がどうトレーニングしているんやろ。

小林:一流企業でサクセション(後継)をちゃんと考えてる会社って、エグゼクティブクラスのトレーニングの場をかなり意識していて、明確な意思を持った育成ローテーションをしてる。リーダーになる者は、ファイナンスは経験しなきゃいけない、事業のPLを背負う経験を持たないといけない、成長市場に対する知見がないといけないという感じで、経営者としてのトレーニングを意識した異動をしてます。