今春以降テスラの株価が乱高下
その原因はイーロン・マスク氏
今年春以降、米国の電気自動車(EV)メーカーであるテスラの株価が乱高下してきた。その原因は、同社の経営状況に加えて会長兼CEOであるイーロン・マスク氏にある。
米証券取引委員会(SEC)はマスク氏を提訴し、同氏は会長という経営トップの座を追われた。ある意味では、想定していた通りの展開だ。この決定は、テスラが堅実な経営者の下で体制を立て直し、本来のあるべき方向に向かって進み始めたことを意味する。
見方を変えれば、マスク氏には経営者の本来あるべき資質が不足していたということだ。著名なイノベーターが名経営者とは限らない。マスク氏が起業を目指した背景には、自らの力で従来にはない新しい発想を実現する“イノベーション”を発揮し、社会の問題を解決しようとする意気=アニマルスピリットがあった。それは、付加価値を生み出すために必要な要素ではある。
しかし、それと企業経営に求められる能力とは必ずしも同じではない。企業は社会の公器だ。企業は、株主、従業員、消費者(顧客)など多様な利害関係者(ステークホルダー)と良好な関係を築き、持続的な成長を目指さなければならない。多様な利害の調整を行いつつ、組織全体が進むべき方向を示すことは経営者の基本的な責務だ。
自分の成果を誇示したり、常に目立とうとすることが経営者に求められる資質ではない。マスク氏はこの重要なポイントをあまり理解できていなかったということだろう。