規制の一部だけの
整備では不十分
日本と世界各国の関連法の相違点について、より顕著なものについて以下に挙げる。
・海外では公開買付価格の1株900円自体がおそらくもっと高値だっただろうと思われる。日本とは異なり、独立取締役および独立した査定専門家による委員会が価格を精査し、承認しなければならないためである。さらに、最良の価格を達成できるよう他の買収候補者に向けた競争的なオークションも行われただろう。
・2段階を1つのまとまった取引とし、公開買い付け価格を一様に適用しただろう。
・取引には、構成要素である各段階と全体の双方について、臨時株主総会における株主の承認が求められただろう。
・海外では「上場子会社」の経営管理が煩雑なため、海外の日本農薬買収者は、裁判所の監督による価格で一般株主から100%買収する他なかっただろう。
日本はコーポレートガバナンスをグローバルスタンダードに近づけると約束してきた。
しかし、ADEKAと日本農薬のケースが示すように、コーポレート・エコシステムとこれに付随する法基盤は一般株主の不利益をもって法人大株主を優先するものとなっており、目標の達成に苦労している。他の企業を所有する企業(サラリーマンが株主としての決定を下す)の数々は、サラリーマンでもある経営者がお互いに融通を利かせながら説明責任を回避するという、心地よいシステムを作り出している。
当然ながら、多くのサラリーマン経営者はこのシステムが「そのままの状態でいい」と思っている。しかし、それは“グローバルスタンダード”の視点から見れば、間違っているのは明らかだ。
日本におけるコーポレートガバナンスを改善するには、「骨抜き」の「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ、さもなければ説明せよ)」に基づくコーポレートガバナンス・コードだけ、また一部の規則を微調整するだけでは不十分なのである。



