「義母の口が臭い」
夫に相談したが
「あの方ね、お口が臭いのよ。病気なんじゃないかしら」
山歩きを楽しんできた義母を車で駅まで迎えに行った爽子さん(仮名・39歳)は、義母の友人2人も、家まで送ってあげることにした。2人目が降りたところで義母は、鼻をつまむ仕草をしながら、冒頭の台詞(せりふ)を口にしたのだった。
「そうですね、ちょっと臭い、きつかったですよね。口臭は虫歯や歯周病のほか、糖尿病とかいろいろな内臓疾患とも関係があるっていいますよね」
相槌(あいづち)を打つと、さらに義母は続けた。
「そうなのよ。心配だわ。私ね、あんまり臭いから、さりげなくミントのスースーする飴(あめ)をね、あげてみたの。でも、ぜーんぜん、効かないのよね。やっぱりご病気かしら。あんなに臭いんだから、ご家族から言ってあげたらいいのにね。口臭は、自分では気づきにくいらしいから」
(まったくその通りだわ。本人はぜんぜん、気がつかないのよ、ね、お義母さん)
爽子さんは、心の中でつぶやいた。なぜなら、義母の口臭も、友人に負けず劣らずきつかったからだ。
義母と同居を始めてまだ2ヵ月。それまでも月に一度は会ってはいたが、特に臭いとは感じていなかった。最初に臭いと感じたのは台所仕事の最中に、義母が背後から話しかけてきたときだった。ごく他愛(たわい)もない内容だったのだろう、話の中身は覚えていないが、排せつ物のような強烈な悪臭に、思わず息が詰まったことを覚えている。とにかく生理的に受け付けない。それからは、半径30cm以内で話しかけられるのが恐怖になった。