スマホは世界的に販売台数が鈍化しているが、それぞれが高機能化していることから、1台当たりの搭載個数は増加している。MLCCの搭載個数はローエンドスマホで200~400個だが、ハイエンドスマホで550~900個に達するという。

 さらにインパクトが大きいのは、自動車の電子化だ。エンジン車のMLCCの搭載個数はスマホの3倍以上。それがプラグインハイブリッド車になればさらに拡大し、電気自動車(EV)になるとスマホの10倍が必要だ(図(3))。

 米ゴールドマン・サックスの調査によると、17年度の自動車向けのMLCCの市場が約1800億円だったのに対し、20年には4000億円程度になる見通しだ。これは、17年度のスマホ向けの市場を超える水準で、その後も加速度的に増加して25年には9000億円を超えるという(図(4))。

 自動車向けの電子部品は参入障壁が高いのも強み。村田は、自動車向けMLCCの分野でも首位を確保しており、2位のTDKと共に日本勢2社で市場を分け合っている状況で、競合している韓国サムスングループの電子部品会社、サムスン電機(SEMCO)よりも有利なポジションにいる。

MLCC不足に
自動車メーカーから増産圧力高まる

 だが、むしろ足元では、MLCCは供給不足なのが実態だ。村田はMLCCの生産能力を年間10%程度ずつ伸ばしてきたが、それでも工場ではフル稼働が続いていて注文が追い付かない。

 村田はMLCCの生産拠点のうち、6月には福井で新工場棟を建設すると表明し、9月にも島根で新工場棟を建設すると発表した。村田全体の18年度の設備投資は過去最高の3400億円になる計画。福井と島根の新棟は19年11~12月に完成する予定で、急ピッチで増産に対応する。

 ただ、自動車のEV化や自動運転化は加速しており、MLCCの需要拡大はとどまるところを知らない。現状の増産投資計画だけでは、MLCCの供給不足は一段と深刻化する可能性がある。

 業界関係者によると、これ以上のMLCCの増産は、人材やメカニカル設備の不足から、品質や歩留まりの低下を引き起こす恐れがあり、難しい状況にあるという。

 村田は自動車メーカーの顧客に対し、スマホ向けに供給している体積の小さなMLCCの採用を働き掛けて、現状の設備で物量を確保しようとしているが、自動車メーカー側にとっては設計変更につながることから、部品の切り替えには時間がかかるとみられる。

 村田にとって急な増産はコスト増にもつながり、リスクが付きまとう。今期いっぱいはメーカーとの値上げ交渉を続けて、増産投資の採算を確保する方針だ。

 ただ、自動車メーカーからの増産圧力は強まる一方。韓国や台湾メーカーとの設備増強競争に巻き込まれれば、苦しい展開になる。MLCCの需要増を見極めながら、供給能力を段階的に判断する難しい局面が続きそうだ。