金融インサイド#9Photo:JIJI

全国の中でも地銀再編が進んできた九州。その流れが及んでいなかった宮崎県でも、ついに再編の兆しが見え始めた。11月14日、宮崎銀行が宮崎太陽銀行の株式を大量取得し、議決権比率8.1%の筆頭株主になったことを公表したのだ。金融庁が昨秋から、地銀トップとの対話で進めている“官製再編”がいよいよ本格化し、経営統合や合併を見込む声が広がる。長期連載『金融インサイド』の本稿では、金融庁幹部や関係者への取材を基に、宮崎銀行が筆頭株主となった意味を読み解く。(ダイヤモンド編集部 高野 豪、永吉泰貴)

宮崎県の2行体制に変化の兆し
筆頭株主浮上で再編含みの展開へ

「宮崎銀行が宮崎太陽銀行の筆頭株主に浮上した以上、再編は視野に入っている。それでも、リリース後に両行の株価がほとんど動かなかったのは意外だ」

 西日本の地方銀行関係者はこう話す。11月14日、宮崎銀が宮崎太陽銀の株式29万7100株を取得し、議決権比率8.1%の筆頭株主となったリリースを受けてのコメントだ。

 経営統合の可能性について宮崎銀は「今後について決まっている事実は一切ない」と回答した。宮崎銀と宮崎太陽銀の株価は、11月18日11時時点で大きく動いていないものの、九州の地銀事情に詳しい関係者の間では、すでに再編を前提とした議論が進んでいる。「両行が検討するのは、経営統合か、それとも合併か」(前出の地銀関係者)という話に移っているのだ。

 宮崎県といえば、金融庁が2018年に公表した報告書「地域金融の課題と競争のあり方」で、都道府県別で地銀の持続可能性を3区分した際、「1行単独になっても不採算の地域」に分類された県である。金融庁は当時から、いずれ再編が避けられない地域と見ていた。

図表22:各都道府県における地域銀行の本業での競争可能性(モデルによる資産)金融庁「地域金融の課題と競争のあり方」図表22 拡大画像表示

 こうした中、宮崎県では2行体制が続いてきたが、宮崎銀が宮崎太陽銀の筆頭株主に躍り出たことで状況は一変。金融庁の幹部の一人は「これは“いい話”だ。将来的に経営統合は十分選択肢になる。宮崎銀が議決権比率を20%近くまで引き上げれば、統合への流れは一気に強まるはずだ」と話す。

 地銀再編が進んできた九州で、宮崎県でもいよいよ再編が現実味を帯びてきた。次ページでは、九州の地銀勢力図を基に、これまで再編の波が及びにくかった地域を整理。その一つである宮崎県で、宮崎銀が宮崎太陽銀の筆頭株主となった意味を、金融庁幹部らへの取材を基に読み解く。