デビューや連載に至る道筋についても同様である。「ここに載りたい」という思いがなくなると、マンガ家志望者たちは「編集会議を突破して自分の連載の番が回って来るのを待つ」というような不確実な方法ではなく、「こういうステップを踏めばプロになれる」「掲載可否の返事は何日以内にくる」「いいね! をいくつ取ったら公式作家になれる」といった、可視化・定量化された指標を求めるようになる。

 ではマンガ家志望者たちに対して、アプリ事業者はどのようなリクルーティングをしているのだろうか。「comico」の場合、投稿者(マンガ家)を「チャレンジ」「ベストチャレンジ」「公式」の三段階にランク分けし、ステップアップの道筋を明確にしている。また「GANMA!」は、専属契約作家に液晶タブレットを無償貸与するほか、支援金として月10万円、連載開始で月15万円の金銭報酬も出している。

 既成版元のマンガ新人賞でも、受賞者に賞金を出したり、副賞に液晶タブレットを支給したりすることは珍しくない。だが連載をしていない新人に、毎月支給の支援金や契約金を支払っているのは、既成版元では集英社くらいだろう。新興勢力ほど、新人リクルーティングのために、こうしたアピールをする必要に迫られているのである。

◆マネタイズ手段の多様化
◇「話売り」は販売頻度を高める

 どんなビジネスも、「売上=客数×客単価×頻度」に分解できる。再販制のある日本のマンガ産業は、客単価(=雑誌やコミックスの値段)と頻度(=雑誌やコミックスの刊行ペース)が固定されていたため、ひたすら客数(=部数)の部分を競ってきた。90年代以降は、とくにコミックスの部数で売上を競っている。

 だが2010年代からマンガアプリが台頭しはじめると状況は一変する。マンガアプリは単に電子コミックスを売る書店でもなければ、雑誌に代替する連載媒体でもなかった。マンガアプリは新しい稼ぎ方を作ったのだ。

 たとえば「マンガワン」の場合、主な収益源は5つある。(1)アプリ連載作品のコミックス売上(紙・電子)、(2)アプリ内の各話課金(話売り)、(3)アプリ内の広告、(4)作品のグッズ販売、そして(5)編集部発のゲームアプリだ。