この駆け込み需要のパターンは、1989年の消費税導入およびこれまでの増税のタイミングのたびに見られたもので、今回も同じような動きが予想される。

 つまり、経過措置が適用される2019年3月31日までに大規模修繕工事の契約だけでも済ませておこうと、工事業者への見積り依頼が殺到し、“バブル”価格の見積りが出てくるわけだ。

消費税引き上げ後のほうが
工事費は安くなっていた!

 さらに、増税後に目を向けてみれば、そうした駆け込みの行動が間違いであることがよくわかる。

 それは2014年の消費税引き上げ前後の物価調査データを見れば明らかだ。

 例えば、沖縄県を除く全国のスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアにおける生活必需品の販売金額の前年比を見ると、増税直前まで駆け込み需要で伸びていた販売金額が、増税から1週間後の4月7日の週には、前年比で6%も販売金額が落ち込んでいる。ここから、増税になった途端に消費者が買い控えていたことが見て取れる。

2014年の消費税引き上げ前後の物価調査データ

 販売側にしてみれば、物が売れないことにはどうしようもないため、商品の値段を下げることになる。私は「価格ドットコム」のグラフを見るのが好きで、ときどき眺めているのだが、ノートパソコンや液晶テレビ、カメラ、洗濯機など、いずれの商品も増税直後の1~2週間程度は大きな値動きは見られないが、4月の半ばを過ぎたあたりで、全体的に価格が大きく下がっている。値下がり率は10~24%ほどで、増税前よりもお買い得になったものが少なくない。

 では、大規模修繕工事についてはどうだったかというと、多くのマンションが駆け込みで大規模修繕工事を発注したこともあり、増税後、工事の発注数はガクンと下がった。そうなると、増税直前に有り余るほどの工事を受注して「お腹がいっぱい」になっていた工事業者も、工事が終わってしまうと「お腹がペコペコ」の状態になる。

 そこで、次の工事を受注したい工事業者は、仕事を取るために工事費の値下げをしてくる。中には増税前より工事費を下げてくる工事業者も出てくるほどで、結果として増税後のほうが工事費が安くなるという現象が起こったのだ。