経理部にとって人事部との
連携が欠かせない理由
企業内では他部署との連携が不可欠です。その理由はあえて語るまでもないでしょうが、経営目標を達成するには、異なる部署ともある程度の意思統一を図り、事業活動を進めた方が、生産性が上がる可能性があるからです。
しかしながら、何となく理解はしているものの、企業は異なる考え方や価値観を持つ社員らの集合体である上、日頃から“連携”を意識して仕事に取り組んでいる方は僅少です。これは、筆者が感ずるところですが、どちらかと言えば、自社全体や社会を広く見渡して、自身がどのような位置で何をすべきかといった広い視野を持つ人よりも、自身が所属する部署に課されている予算達成や来年度の事業計画と言った、ごく身近な課題に対して切磋琢磨している人の割合の方が多いようです。
もちろん、こうした身近な課題を達成し、積み上げていくことが企業の繁栄や社員の成長にも繋がるのでしょうが、たとえ同じ課題だとしても、自身にはない能力・知識を有する他部署の人材と連携しながら進めることで、達成度がさらに高まり、異なるジャンルで功を奏すことも有り得るはずです。
さて、本連載の主役である経理部についても、同様に様々な部署との連携は必要ですが、特に人材の育成や採用、そして適材適所の配置を使命としている人事部との連携が密でなければ、役目を果たしにくいはずです。ここで、首を傾げた方、あるいは、あまり他部署と接する機会がなく、「経理部は他部署から煙たがられている」と感じているような方は、ぜひ読み進めてください。
連載第1回から述べているように、経理部は各部署から送信されてくる仕訳データや証票類を通して、全部署の活動を見渡せる位置にあります。そして、時にはコストの有効な活用や削減といった具体的な策を相手方に提案する必要があるため、他部署と良好な関係性を築けなければ、経理部の役割が果たしにくくなります。
こうした経理部の職務の性質上、「各人のコミュニケーション能力は必要不可欠である」といった話に流れますが、日々の定型業務の場面のみならず、経営管理を主目的とした課題の中で、自社の収益・利益達成の実現やキャッシュフローを良好にするためには、特に人事部と連携しながら取組みを行なうことが大切です。「顧客満足度を上昇させて売上を伸ばせる人材」「良質な資材・原料に関する知識や調達ノウハウが豊富な人材」を配置して、収益増・原価圧縮を実現させ、利益やキャッシュを生み出すような組織体制を築く、「マーケティング能力に優れた人材」を育成して今後の収益獲得策を講ずる、といった取り組みは必要なはずです。