1997年の中国への返還に先立つ数年間、香港市民は数十万人単位で海外に向かった。1989年の天安門事件で中国政府が学生デモを弾圧したことに衝撃を受け、自分たちの自由が踏みにじられることを危惧していたのだ。行き先はカナダや米国、オーストラリアなど。そこで新しい生活を始めるか、もしくは将来逃げ出す時の保険として2つ目のパスポートを取得するためだった。やがて多くは香港に戻ってきた。香港の主権が英国から中国に移るなか、中国政府が力を誇示する兆しはほとんど見られなかったからだ。ところが今、市民の自由や生活水準、生活の質への懸念が高まるにつれ、香港脱出の機運が再び高まる兆しがみられる。2014年に香港の民主化要求デモを中国政府が抑え込んだ後、香港の指導者は反政府的な動きを厳しく取り締まった。最も過激な活動家を除き、抵抗運動には無力感が漂っている。
中国の威圧から脱出、香港で再燃する海外移住機運
「北京の包囲網がますます強まり、希望は失われていく」
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