パテルRBI総裁高額紙幣廃止における混乱や金融政策をめぐる対立によってモディ政権と関係が悪化し、辞任に追い込まれたパテルRBI総裁 Photo:REUTERS/アフロ

 2018年末における現金流通高の名目国内総生産(GDP)に対する比率について、国際通貨基金(IMF)のデータを基に推計してみた(以下カッコ内は08年の比率)。

 米国8.3%(6%)、ユーロ圏10.9%(8.3%)、日本20.7%(16.5%)となる。いずれも10年前に比べてキャッシュレス化が進んだように感じるが、対名目GDP比は逆に拡大している。現在、多くの先進国はインフレ率と預金金利が共に低水準にある。人々が現金を持つ機会費用をあまり意識せず、退蔵が起きやすいようだ。脱税等の資金もそこに含まれている可能性はあるだろう。

 一方、中国の現金流通高の対名目GDP比は8.8%(11.6%)と低下が続く。世界最速でキャッシュレス化が進むスウェーデンは1.3%(3.3%)と圧倒的に低い。ただし、街中での現金利用はすでに相当減っており、最近は下げ止まり傾向が見られる。

 インドは特に興味深い。同比率は15年末に11.4%だったが、16年末に6.2%へと劇的に低下。ただ、18年末は10.8%に戻った。

 ナレンドラ・モディ首相は16年11月、ブラックマネーのあぶり出しを目的に、1000ルピー札と500ルピー札を近日中に銀行口座へ入金しないと無価値になると宣言した。両紙幣は流通現金の86%を占めていた。新紙幣への切り替え時にフィンテック(金融ITサービス)によるキャッシュレス化を推進すれば、脱税や汚職を防ぎやすくなるとも考えられた。