中国の「一帯一路」と
袂を分かつインド
インドと中国が世界の「パワーゲーム」の主力になるといわれる中で、2大国の拮抗がクリアになってきた。「一帯一路」構想と袂を分かつかのような動きがインド、そして日本に顕在化している。
それを象徴する動きが、今年5月に北京で開催された「一帯一路」構想の国際フォーラムだ。インドが、このフォーラムに政府代表団を派遣しなかったのである。インドは「一帯一路」構想に第一陣として参加する、アジア21ヵ国のうちの一つであったにもかかわらずだ。
「一帯一路」構想に対するインドの懸念は、パキスタンのインフラ建設「中パ経済回廊」に他ならない。中国の資金で進めるこの回廊が、パキスタンとインドがともに領有を主張する、インドのジャムカシミール州を通過することに不快感を示しているのだ。
「海上のシルクロード」といえば、あたかも交易の発展に資する“夢の航路”を想像させるが、インドにとっての現実はそんなポジティブなものではない。中国がインドを取り囲むようにして進行させる「一帯一路」構想で、インドの影響力は徐々に減退する傾向にある。
すでに中国の影響力は「南アジア地域協力連合(SAARC: South Asian Association for Regional Cooperation)」の加盟国にも及んでおり、“インドの裏庭”といわれるスリランカやバングラデシュなどでは、中国資本による港湾開発が行われている。
日本の海洋政策に詳しい専門家によれば「インド洋で中国の潜水艦航行が常態化し、原子力潜水艦すら目撃されている」という。