ジャン=クロード・ユンケル欧州委員長Photo:Reuters

 【ブリュッセル】英議会が欧州連合(EU)離脱案を大差で否決し、他のEU加盟国は目を背けたくなる問いに直面している。英国との離脱交渉でEUは行き過ぎた成功を収めてしまったのか、という疑問だ。

 昨年終盤、残るEU加盟27カ国とEU当局者は祝賀ムードに包まれていた。英国との合意案で、EU側のほぼすべての交渉目標を達成したためだ。巨額の離脱費用、英国内のEU市民の権利保護、アイルランドとの国境復活を回避する安全策、EU加盟国と同等に摩擦のない貿易条件は求めないとの確約。EUはこれらすべてを英国にのませた。

 もっとも英議員にとっては全く受け入れ難い内容で、 432対202の大差での否決につながった。

 欧州の当局者はすでに、テリーザ・メイ英首相が要請した場合の交渉期限の延長について検討に入った。ペーター・アルトマイヤー独経済相は16日、期限延長は「妥当な要請」と述べたが、一部当局者はEU側が条件をつける可能性を示唆している。

 EUの結束を弱めず、どこまでメイ氏に一段の譲歩を示すか。EU諸国にとって、できれば避けたかったこうした議論が、英議会の否決により再び浮上している。

 行動を怠れば、3月29日の「合意なき」離脱が現実味を帯びる。そうなれば、ぜい弱さを増すユーロ圏経済、巨額のEU予算の手当て、英・アイルランド間の国境復活回避に向けた悪夢のような選択肢が、EU諸国を待ち受けている。

 欧州当局者は足元で「プランB(代替策)」は検討されておらず、メイ氏とEU首脳が昨年11月に承認した合意案が「最善かつ唯一」の案だと繰り返し強調してきた。ジャンクロード・ユンケル欧州委員長は英議会の否決後も、合意案は「秩序だった離脱を確実にする唯一の方策」と述べている。