Sさんの話を聞きながら、私も彼女と同じようにため息をついた。わかりすぎるほどにわかるからである。たしかに20、30年前にはモラハラやセクハラなどの言葉も浸透しておらず、体調が悪そうな若い女性には「生理か」、40歳を過ぎると「更年期か」と言われたい放題だった。でも時は流れに流れて、平成も終わろうとしているこの世の中。武智さんも、男性社員Bも、その頃と意識はなにも変わっていないのだと思うと、絶望感に襲われる。いや、これはなにも男性だけに限らないだろう。若い女性の中にだって、気にいらない女性上司はすべて「更年期障害かっ!」でひとくくりにしてしまう人もいる。

更年期の症状と闘う実態を
2人の息子にすべて話した54歳女性も

「更年期障害か」と揶揄したような言葉を投げかける人がいなくならないのはなぜだろう。「閉経した」と言えば「女じゃなくなったな」と、鬼の首をとったように言ってくる人がいなくならないのはなぜだろう。そういう言葉を、女性を馬鹿にして傷つけるために使う人はきっと、更年期の症状についての知識がゼロなのではないかと思う。

 これまで取材をした中で「自分の子どもには『お母さんになにが起きたのか』を、詳細に話しました」と語る女性がいた。千葉県在住のYさん(54歳)は、約10年近くを更年期のうつ症状と闘ってきた。症状が出始めたのが40代前半だったこともあり、どうしようもなく落ち込んでいく気分や、家族に対するいら立ちなどを更年期のせいだと自分も家族も結びつけることがなかなかできなかったという。内科やいくつもの精神科を渡り歩くドクターショッピング状態となり、最終的には自分で自分に「頭がおかしくなった」と烙印を押してしまい、家族の誰ともまともに会話できなくなっていったという。

 そんなAさんは、知人の「同じような症状の人がいたけど、更年期でホルモンが減った影響だったみたい。ホルモン補充療法をしたら楽になったよ」の一言を聞いて、婦人科を訪れる。医師の説明を聞いたAさんは藁にもすがる思いでホルモン補充療法を決断した。1年経った頃に精神科の薬を減薬することができ、3年経ったいまでは、抗うつ剤を一切飲まずとも生活できるようになった。

 Aさんには、荒れて壊れていく母の姿をずっと間近で見ていた2人の息子がいる。ホルモン治療を開始し落ち着きを取り戻した頃から、Aさんは「更年期の女性の体になにが起きているか」「ホルモン補充とはなにか」を息子たちに説明することを始めたという。