それはどんな思いからだったのだろう。私の質問にAさんはこんなふうに答えてくれた。

「私はHRT(ホルモン補充療法)の布教者でもなんでもないんですよ。でも将来彼らも結婚して、家族を作るかもしれませんから。人によって症状の重さは違いますが、更年期は誰にでも来るもの。知識があったほうが奥さんの体調を気遣えるし、いざというときに慌てなくてすみます。なにより、更年期について偏見や間違った知識を持ってほしくなかったんです」

 学校で教えてくれないなら家庭で。そんな思いから自分の子どもに「更年期について」話す女性は増えているようだ。

「更年期でつらい」と隠さずに
誰もが普通に話せる世の中に

 女性ホルモンは体のさまざまな機能を助ける大切な存在だ。それが突然ガクッと減少してしまうことで、多種多様な症状が起きる。経験したことのない不調の連続に「私、どうした? 体、どうなってる?」と女性は自問自答を繰り返す。不安や驚き、焦りと苛立ち。「更年期=笑っていいもの」という脈々と続いてきた世の流れにとらわれ、「更年期だと言うと馬鹿にされる、女じゃなくなったと思われる」という思いから、つらくても「更年期です」と認められない女性も多い。

 だが、更年期であると受け入れられなかったせいで、うつ症状などの重篤な状態に陥ってしまう場合もあるのだ。更年期障害でひどく苦しむ人がいる――この事実を知っていても、武智氏はあんな言葉を吐けただろうか。笑い者にしてやろうとの思いを持てただろうか。

 更年期は誰にでも来る。人間ならば自然な体の変化であり、女性だけでなく男性も症状に悩むことはある。だからこそ、まず「風邪ひいた」と言うぐらいのごく当たり前の感覚で、「更年期でつらい」と隠さずに普通に話せるような世の中になるべきだと思う。そのためには年齢や性別を問わず更年期についてある程度の知識を持つことは、必要ではないだろうか。

 今回の武智氏の発言は女性としては1ミリも共感できないが、それでも多くの人が更年期について考え、発言し、つらい症状で悩む人には「声を上げていいんだ」と思えた、1つのきっかけとなったように思う。

(メノポーズカウンセラー、更年期ジャーナリスト 日々晴雨)