――空間エンジニアリングとは?

 デジタルがこれだけ入り込んでいる世界で、たくさんのものを店に並べて売ることに対して価値を感じている人は減ってきていると思う。それなら、うちの3000坪の空間をどう使うべきか、もう一度組み立てる必要があります。リアル店舗だからできるイベントはもちろん、スマートフォンではわからない匂いや手触りが伝えられたり、お客さま同士をリアルでつなげるような取り組みとか。

 小売業が戦略的に意図してやっていなかったものを、具体化はこれからですが、カインズのモール事業「くみまちモール」でやっていこうとしています。地域と密着して、そこの拠点となるようなもの、コミュニティだけではなくて、例えばモビリティ(移動手段)を加味した拠点とか。テクノロジーの力を用いた、われわれの考える“IT小売業”です。そうした既存店改善をした上で、新たな成長ドライバを立ち上げていきます。昨年始めている新業態も成長させつつ、さらにそれを越えていく。

――昨年は「くみまちモール」に加え、小型のライフスタイルショップ「スタイルファクトリー」も名古屋に2店舗オープンしました。

 その二つも、昨年3月に行った組織改革から生まれたものです。この改革では、商品軸だった組織を顧客軸に変えました。

 今までは品番でコードがついているため、担当バイヤーがいて、調達を考えていました。これって、サプライヤー(商品供給者)の論理なんですよね。品番で商品を探すお客さんなんてほとんどいないでしょう? だから、サプライヤーではなく、顧客論理にしようと。商品を起点に店舗を作るべきではない、というのは創業以来の大転換でした。

 そこで、お客様の求める価値から考えて、商品関連部署を三つのSBU、「プロ」「ライフスタイル」「日用雑貨」に分けました。それぞれの売り上げで1000億円を超えることを目標にしています。顧客軸で組織を分けた結果、それぞれで新しいサービスや店舗設計が生まれてきました。

――具体的には。

 例えば「プロ」は、新座資材館Proという店舗で始めた「55-DASH」という取り置きサービスを始めました。お客さまから店舗の在庫の確認があれば、取り置きし、55分以内に取りそろえてお出しするというサービスです。業者の方がホームセンターに来るときは買うものが決まっていますから、店員は相手に対して提案する必要はなく、むしろ早く出すことが重要になるんです。

 一方、「ライフスタイル」から生まれた「スタイルファクトリー」という業態は、回遊型の小型店舗で都心部にも入っていく予定です。日用品は、デザイン展をメーカーとコラボして開催しました。これは、いうなればAmazonとの差別化です。